作成日:2026.02.07  /  最終更新日:2026.03.16

税理士を変更するときにかかる費用とスムーズな引き継ぎ手順

税理士の変更にかかる費用は、新しい税理士との顧問契約料が中心で、変更手続き自体に特別な費用はほとんど発生しません。ただし、引き継ぎの進め方を間違えると余計なコストや手間がかかります。この記事では、税理士変更にかかる費用の内訳から、トラブルなく引き継ぎを完了させる具体的な手順まで解説します。

この記事の目次

税理士の変更手続き自体に費用はほぼかからない

「税理士を変えるのにいくらかかるのか」という不安を持つ方は多いですが、変更手続き自体に特別な手数料は発生しません。税理士との顧問契約は民法上の委任契約であり、双方いつでも解約が可能です。

行政への届出費用も基本的にかかりません。税理士が変わった場合、新しい税理士が税務代理権限証書を税務署へ提出するだけで手続きは完了します(出典 国税庁 税務代理の権限の明示)。この提出に費用はかかりません。

つまり、税理士変更で実際にかかる費用は「新しい税理士への報酬」と「解約時の精算」の2つに集約されます。(変更そのものにハードルがあるように感じますが、費用面のハードルは想像より低いです)

税理士変更で発生する費用は主に3つ

税理士を変更する際に発生しうる費用は、以下の3つです。それぞれの内訳を把握しておけば、想定外の出費を避けられます。

費用の種類 金額の目安 発生条件
前の税理士への精算金 月額顧問料の1〜2か月分 契約内容・解約時期による
新しい税理士の顧問料 月額1〜5万円 事業規模・依頼内容による
決算・申告が重なる場合の追加費用 5〜20万円 決算期直前に変更した場合

前の税理士への精算金は契約書を確認する

多くの顧問契約では、解約の際に「解約予告期間」が定められています。一般的には1〜3か月前の通知が必要で、この期間分の顧問料は支払い義務が生じます。

たとえば月額3万円の顧問契約で「解約は2か月前に通知」という条項がある場合、通知後2か月分の顧問料6万円は支払う必要があります。契約書に解約条項がない場合は、民法の委任契約の規定に基づき、いつでも解約可能です。

また、年間契約で一括払いをしている場合は、未経過分の返金があるかどうかも契約書で確認してください。返金規定が明記されていなければ交渉の余地がありますが、トラブルになりやすいポイントです。

新しい税理士の顧問料は事業規模で決まる

新しい税理士の顧問料は、事業規模(年商)と依頼する業務範囲によって変わります。税理士の変更を機に、現在の顧問料が適正かどうか見直すのも一つの手です。

年商 個人事業主の月額顧問料 法人の月額顧問料
500万円以下 1〜1.5万円 1.5〜2.5万円
500万〜1,000万円 1.5〜2.5万円 2〜3万円
1,000万〜3,000万円 2〜3万円 2.5〜4万円
3,000万〜5,000万円 3〜4万円 3〜5万円

上記に加えて、決算・申告料が別途かかるのが一般的です。個人の確定申告で10〜20万円、法人の決算申告で15〜30万円が目安です。(「月額顧問料に決算料込み」という事務所もあるので、見積もり時に必ず確認してください)

決算期直前の変更は追加費用が発生しやすい

決算期の直前に税理士を変更すると、新しい税理士が短期間で過去の会計データを把握しなければならず、通常より高い報酬を請求されることがあります。

具体的には、期中の仕訳データの確認・修正作業が発生するため、通常の決算料に加えて5〜10万円程度の追加費用がかかるケースが多いです。税理士の変更は、決算が終わった直後のタイミングがもっとも費用を抑えられます

税理士変更の費用を抑える3つのポイント

税理士変更にかかるトータルコストを最小限に抑えるには、タイミングと準備が重要です。

決算終了直後に変更すれば引き継ぎコストが最小になる

決算・申告が完了した直後であれば、新しい税理士は翌期からまっさらな状態で業務を始められます。期中の仕訳データの確認・修正が不要なため、引き継ぎにかかる追加費用が発生しません。変更を決めたら、まず決算スケジュールを確認してタイミングを計画してください。

複数の税理士から見積もりを取って比較する

税理士の報酬は2002年の税理士法改正で自由化されており、同じ業務内容でも事務所によって費用に差があります。最低でも2〜3社から見積もりを取って比較するのが鉄則です。

見積もりを比較する際は、月額顧問料だけでなく以下の点を確認してください。

  • 決算・申告料は月額に含まれるか、別途かかるか
  • 記帳代行は含まれるか、別料金か
  • 税務調査の立会い費用は含まれるか
  • 年末調整や償却資産の申告は追加費用か

自分で複数の税理士を探して見積もりを取るのが手間であれば、税理士紹介サービスを使うと、希望の予算と業務内容に合った税理士を無料で紹介してもらえます。

引き継ぎ資料を自分で整理しておけば追加費用を減らせる

新しい税理士への引き継ぎ時に、会計データや書類が整理されていないと、データの整備に時間がかかり、その分の費用が上乗せされます。前の税理士から資料を受け取ったら、後述する引き継ぎ書類のリストを参考に、不足がないか自分でも確認しておくと、余計なコストを防げます。

税理士を変更する手順は5ステップで完了する

税理士の変更は、以下の5ステップで進めれば漏れなく完了します。

  1. 現在の顧問契約の解約条件を確認する
  2. 新しい税理士を探して面談・見積もりを取る
  3. 現在の税理士に解約を通知する
  4. 引き継ぎに必要な書類・データを受け取る
  5. 新しい税理士と顧問契約を結び、引き継ぎを完了する

重要なのは、先に新しい税理士を決めてから現在の税理士に解約を伝えることです。先に解約してしまうと、新しい税理士が見つかるまでの間、税務相談ができない空白期間が生まれます。特に決算や申告の時期が近い場合、この空白は致命的です。

現在の契約書で解約予告期間と違約金を確認する

最初に確認すべきは、現在の顧問契約書の解約条項です。確認すべきポイントは以下の3つです。

  • 解約予告期間(1〜3か月前の通知が一般的)
  • 違約金や解約手数料の有無
  • 年間契約の場合の途中解約・返金規定

契約書が手元にない場合は、現在の税理士に契約内容の確認を求めてください。口頭契約で書面がない場合は、民法の委任契約の規定に基づき、いつでも解約が可能です。(ただし、解約の意思は書面やメールなど記録が残る形で伝えることをおすすめします)

新しい税理士は「面談」で相性を確認してから決める

見積もりの金額だけで選ぶと、同じ不満を繰り返すことになりかねません。面談時に以下の点を確認してください。

  • 質問へのレスポンスの速さ(メール返信は何営業日以内か)
  • 自社の業種・規模の顧客を担当した経験があるか
  • 使用している会計ソフト(クラウド会計への対応状況)
  • 担当者は誰か(代表税理士かスタッフか)

正直、税理士との相性は会ってみないとわかりません。面倒でも2〜3人の税理士と面談してから決めるのが、変更を成功させる最大のコツです。

前の税理士から必ず受け取るべき書類一覧

前の税理士から受け取るべき書類に漏れがあると、新しい税理士の業務開始が遅れ、追加費用の原因になります。以下のリストで確認してください。

カテゴリ 書類・データ 重要度
申告関連 過去3年分の確定申告書・決算書の控え 必須
申告関連 消費税申告書の控え(課税事業者の場合) 必須
届出関連 税務署への届出書の控え(開業届・青色申告承認申請書など) 必須
会計データ 会計ソフトのデータ(仕訳データ・勘定科目体系) 必須
会計データ 総勘定元帳 必須
会計データ 固定資産台帳 必須
給与関連 給与台帳・年末調整関連書類 該当者のみ
契約関連 預けていた原本書類(契約書・登記簿謄本など) 必須

特に重要なのは会計ソフトのデータです。前の税理士が独自のソフトを使っている場合、データの書き出し(エクスポート)を依頼しないと、新しい税理士がゼロから入力し直すことになり、その分の費用が余計にかかります。解約を伝える際に、データの受け渡し方法を必ず確認してください。

税務代理権限証書の変更届は新しい税理士が対応する

税理士を変更すると、税務署への届出として「税務代理権限証書」の提出が必要です。これは「この税理士に税務の代理を委任します」と届け出る書類で、新しい税理士が提出すれば税務代理人が切り替わります。前の税理士は「税務代理の委任が終了した旨の通知書」を提出して委任関係を終了させます(出典 国税庁 税務代理の委任終了通知)。

この手続きは税理士側が行うため、依頼者が税務署に行く必要はありません。ただし、前後の税理士双方に「税理士を変更した」旨を明確に伝えてください。(税務署からの通知が前の税理士に届き続けるトラブルを防ぐためです)

税理士を変更すべきタイミングの判断基準

以下のケースに該当する場合は、変更を具体的に検討する価値があります。

レスポンスが遅い・連絡が取れない場合は変更すべき

メールの返信に1週間以上かかる、電話しても折り返しがないといった状況が続いているなら、変更を検討すべきです。顧問契約を結んでいるのに必要なときに相談できなければ、顧問料を払っている意味がありません。目安として、メールの返信は3営業日以内、緊急の相談には当日〜翌営業日に対応してくれる税理士が望ましいです。

事業規模が変わったら税理士の見直しを検討する

開業時に依頼した税理士が、事業の成長に対応できなくなるケースは珍しくありません。以下のような変化があれば、変更を検討してください。

  • 年商が1,000万円を超えて消費税の課税事業者になった
  • 従業員を雇い始めて給与計算・社会保険の対応が必要になった
  • 個人事業から法人に変更(法人成り)した
  • 複数の事業や不動産投資を始めた

顧問料が相場より明らかに高い場合は見積もりを取る

長年同じ税理士に依頼していると、顧問料が契約当初のまま据え置かれているケースがあります。2002年の税理士法改正以降、報酬は完全に自由化されており、事務所ごとに差があります(出典 日本税理士会連合会 第7回税理士実態調査報告書)。見積もりを取ること自体は無料なので、3年以上顧問料を見直していない方は一度確認してみてください。

税理士変更でよくあるトラブルと対処法

初めて税理士を変更する方がつまずきやすいポイントを押さえておけば、余計な費用やストレスを避けられます。

前の税理士が書類を返してくれない場合の対処法

解約後に前の税理士が書類の返却に応じないケースがまれにあります。依頼者の書類(原本)は依頼者の所有物であり、税理士に所有権はありません。まずは書面で返却を依頼し、応じない場合は所属する税理士会の苦情相談窓口に相談してください。(実際には、書面で正式に返却を求めれば大半のケースで対応してもらえます)

前の税理士との関係がこじれないための伝え方

解約通知は感情的にならず、事実ベースで伝えるのがポイントです。以下のような伝え方が角が立ちません。

  • 「事業規模が変わったので、別の専門分野の税理士に依頼することにしました」
  • 「知人の紹介で別の税理士にお願いすることになりました」
  • 「経営方針の変更に伴い、顧問体制を見直すことにしました」

解約の意思はメールや書面など記録が残る形で伝えてください。解約通知には、解約希望日・書類の返却依頼・未精算の顧問料の確認を含めておくとスムーズです。

引き継ぎ期間中に申告期限が来る場合は要注意

引き継ぎが間に合わないまま申告期限を迎えると、延滞税や加算税が発生します。変更のタイミングには注意が必要です。

申告期限まで2か月を切っている場合は、現在の税理士に今期の申告まで依頼し、翌期から新しい税理士に切り替えるのが安全です。無理に変更を急いで申告遅延になると、ペナルティの方がはるかに高くつきます。

税理士変更にかかる費用のシミュレーション

実際に税理士を変更した場合の費用を、2つのパターンで比較します。

個人事業主(年商800万円)が決算後に変更した場合

費用項目 金額
前の税理士への精算金(解約予告1か月分) 2万円
新しい税理士の月額顧問料(初月分) 2万円
引き継ぎの追加費用 0円(決算後のため)
合計 約4万円

法人(年商3,000万円)が期中に変更した場合

費用項目 金額
前の税理士への精算金(解約予告2か月分) 8万円
新しい税理士の月額顧問料(初月分) 4万円
期中データの引き継ぎ・確認費用 5〜10万円
合計 約17〜22万円

変更タイミングだけで費用が2倍以上変わります。決算後の変更であれば引き継ぎの追加コストはほぼゼロですが、期中の変更では仕訳データの確認・修正作業が発生するため、費用が大きく膨らみます。

変更のベストタイミングについては税理士を変更すべきタイミングで詳しく解説しています。次の税理士探しで失敗しないためのポイントは税理士の選び方もあわせてご覧ください。

最後に

税理士の変更自体にかかる費用は、多くの方が想像するほど大きくありません。変更手続きに手数料はかからず、実際にかかるのは前の税理士への精算金と新しい税理士への報酬が中心です。費用を最小限に抑えるには、決算終了直後のタイミングを選び、引き継ぎ書類を漏れなく受け取ることが重要です。

税理士の変更で最も大切なのは、次の税理士選びで同じ失敗を繰り返さないことです。費用だけでなく、レスポンスの速さや自社の業種への理解度を基準に、複数の税理士を比較してから決めてください。

自分で複数の税理士を探すのが大変な場合は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。希望条件に合った税理士を無料で紹介してもらえます。

執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。