「顧問税理士って本当に必要なのか」「毎月お金を払ってまで契約する意味があるのか」と疑問に感じている方は多いです。結論として、年商1,000万円以下の個人事業主やフリーランスであれば、顧問契約なしでも問題なく事業を回せるケースは十分にあります。ただし、売上規模や事業の複雑さによっては、顧問税理士がいないことで損をしている可能性もあります。この記事では、顧問税理士が不要なケースと必要になるラインを具体的に解説します。
この記事の目次
年商1,000万円以下なら顧問税理士なしでも問題ないケースが多い
顧問税理士が不要かどうかは、事業規模と取引の複雑さで決まります。年商1,000万円以下で、取引先が少なく、経費の種類もシンプルな事業であれば、顧問契約なしで運営している事業主は珍しくありません。
実際、日本には約8万人の税理士が登録されていますが(出典 日本税理士会連合会 税理士登録者数)、すべての事業者が顧問契約を結んでいるわけではありません。令和6年分の所得税の確定申告人員は約2,339万人に上りますが(出典 国税庁 令和6年分の確定申告状況)、その大半は税理士に顧問を依頼せず、自力または確定申告時のみのスポット依頼で対応しています。
顧問契約なしで回せる事業の特徴
以下に当てはまる事業者であれば、顧問税理士なしでも大きなリスクはありません。
- 年商1,000万円以下で消費税の課税事業者ではない
- 取引先が少なく、売上・経費の仕訳がシンプル
- 従業員を雇っていない(源泉徴収や年末調整が不要)
- クラウド会計ソフトを使って自分で記帳できている
- 事業以外の所得(不動産所得・株式譲渡など)がない
(正直なところ、フリーランスのライターやデザイナーで年商500万円程度なら、freeeやマネーフォワードで十分対応できます)
クラウド会計ソフトの普及で「自分でやれる範囲」は広がっている
2026年時点では、クラウド会計ソフトの精度がかなり上がっています。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、仕訳の大半は自動で処理されます。青色申告特別控除(最大65万円の所得控除)に必要な複式簿記も、ソフトが自動で対応してくれるため、簿記の知識がなくても青色申告は可能です。
ただし、「ソフトに任せておけば完璧」というわけではありません。勘定科目の選択ミスや、本来経費にならないものを計上してしまうリスクは自己責任です。ソフトは入力された情報をもとに処理するだけで、その入力が正しいかどうかは判断してくれません。
顧問税理士がいらないと感じる3つの理由
「顧問税理士はいらない」と考える事業主には、共通するパターンがあります。
毎月の顧問料に見合うサービスを実感できていない
顧問契約を結んでいるのに、税理士から連絡があるのは決算時だけ。毎月1〜3万円を払っているのに何をしてもらっているのかわからない。このパターンは非常に多いです。
顧問料の相場は個人事業主で月額1〜3万円、法人で月額2〜5万円です。年間にすると12〜60万円になります。この金額に対して「毎月の面談」「税務相談」「経営アドバイス」が含まれているはずですが、実態として形骸化しているケースは珍しくありません。
(顧問契約を結んでいるのに年に1回しか連絡がこない税理士は、正直変えた方がいいです)
確定申告だけなら年1回のスポット依頼で済む
「税理士に頼みたいのは確定申告だけ」という方であれば、顧問契約は不要です。確定申告のみのスポット依頼であれば、白色申告で5〜10万円、青色申告で10〜20万円が相場です。顧問料を年間で払うよりも大幅にコストを抑えられます。
自分で調べれば大抵のことは解決できると考えている
国税庁のウェブサイトやタックスアンサーには、主要な税務手続きの情報が網羅されています。確定申告の手引きも毎年公開されており、基本的な申告であれば自力で完結できます。
ただし、ここに落とし穴があります。「調べればわかる」と「正しく処理できている」は別の話です。税務の専門知識がない状態で自己判断した結果、控除の適用漏れや経費の計上ミスで数万〜数十万円の損をしているケースは、税理士業界ではよく知られた話です。
顧問税理士が必要になる5つのタイミング
顧問税理士なしでやれていた事業者でも、以下のタイミングで顧問契約を検討すべきです。
年商が1,000万円を超えて消費税の課税事業者になったとき
年商1,000万円を超えると、2年後から消費税の課税事業者になります。消費税の申告は所得税の確定申告とは別に必要で、計算方法も「本則課税」と「簡易課税」の2種類があります。どちらを選ぶかで納税額が数十万円単位で変わることもあるため、専門家の判断が必要になるポイントです。
さらに、2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)により、年商1,000万円以下でも課税事業者を選択するケースが増えています。消費税の処理は自力では難しいと感じる事業主が大半です。
従業員を雇用したとき
従業員を1人でも雇うと、源泉徴収や年末調整、社会保険の手続きが必要になります。毎月の給与計算、源泉所得税の納付、年末調整の書類作成など、処理すべき業務が一気に増えます。パートやアルバイトであっても、一定の給与額を超えれば源泉徴収が必要です。
これらの業務を自分で行うことは不可能ではありませんが、ミスが発生すると従業員との信頼関係にも影響します。
法人化(法人成り)を検討しているとき
個人事業主から法人に切り替える「法人成り」は、税理士なしで進めるのはリスクが大きいです。法人設立のタイミング、届出書の提出先と期限、役員報酬の設定、社会保険の加入手続きなど、判断を誤ると数十万〜数百万円単位のコスト増につながる可能性があります。
法人化を検討している段階で、税理士の無料相談サービスを使って事前にシミュレーションしておくのが賢明です。
税務調査の連絡が入ったとき
税務調査は、すべての事業者に可能性があります。調査の連絡が入ってから慌てて税理士を探す方もいますが、顧問税理士がいれば事前の準備から当日の立ち会い、調査後の交渉まで一貫して対応してもらえます。
顧問契約がない場合でも税務調査のスポット対応を依頼できますが、過去の帳簿や申告内容を初見で確認するため、対応が後手に回りやすいです。
事業の取引が複雑化してきたとき
海外取引、不動産の売買、投資による所得、相続や事業承継など、事業に関わるお金の流れが複雑になってきたら、顧問税理士の出番です。特に、複数の所得区分にまたがる確定申告は、専門知識なしで正確に処理するのは現実的ではありません。
「顧問税理士なし」で損をしやすいパターン
顧問契約なしでやっていても問題ないケースがある一方で、気づかないうちに損をしているパターンもあります。
控除や特例の適用漏れで余計な税金を払っている
所得税には数多くの控除制度がありますが、自分で申告している方は適用できる控除を見落としがちです。たとえば、青色申告特別控除を最大額の65万円で適用するには、e-Taxでの提出または電子帳簿保存が必要ですが、この要件を知らずに55万円の控除で申告している方は少なくありません。
(確定申告を自分でやって節約したつもりが、控除の見落としで数十万円損しているケースは珍しくありません)
記帳や申告に毎年大量の時間を取られている
「税理士に払うお金がもったいない」と考えて自分で対応する場合、見落とされがちなのが時間コストです。確定申告の準備に毎年2〜3日かかっているなら、その時間で本業の売上を立てた方が経済的にプラスになる可能性があります。
月額1〜2万円の顧問料を「高い」と感じるかどうかは、自分の時給と照らし合わせて判断すべきです。年商500万円の事業主が確定申告に丸3日費やしているなら、その3日間の機会損失は約4〜5万円です。税理士にスポットで依頼した方が合理的な計算になります。
顧問契約の代わりに使える選択肢
「毎月の顧問料は払いたくないが、完全に自力でやるのも不安」という方には、中間的な選択肢があります。
確定申告のスポット依頼は年間コストを大幅に抑えられる
前述の通り、確定申告だけをスポットで依頼する方法です。費用の目安は以下の通りです。
| 申告の種類 | 費用の目安 |
|---|---|
| 白色申告 | 5〜10万円 |
| 青色申告(10万円控除) | 8〜15万円 |
| 青色申告(65万円控除) | 10〜20万円 |
顧問契約で年間12〜36万円かかるところを、スポット依頼なら5〜20万円に抑えられます。ただし、スポット依頼は「申告時点の帳簿を渡して処理してもらう」形式のため、日々の記帳は自分でやる必要があります。
税理士の単発相談やオンライン相談を活用する
最近は、1時間あたり5,000〜1万円程度で単発の税務相談を受けてくれる税理士が増えています。「この経費処理は合っているか」「法人化のタイミングはいつがいいか」など、ピンポイントの疑問を解消するだけなら、顧問契約よりもコスパが良い方法です。
税務署の無料相談や商工会議所のサービスを使う
税務署では確定申告期に無料相談コーナーが設置されるほか、各地の商工会議所でも税務相談を受けられます。日本税理士会連合会も無料の税務支援事業を実施しています。費用をかけずに専門家の意見を聞きたいなら、まずはこれらの公的サービスを活用するのも一つの手です。
(ただし、無料相談は一般的な質問への回答にとどまります。個別の事情に踏み込んだアドバイスを求めるなら、やはり個別に税理士へ相談する方が確実です)
売上規模別の判断基準まとめ
顧問税理士が必要かどうかは、売上規模で大まかに判断できます。以下の表を参考にしてください。
| 年商 | 顧問契約の必要性 | 推奨する対応 |
|---|---|---|
| 300万円以下 | 基本的に不要 | クラウド会計ソフトで自力対応。不安なら確定申告時のみスポット依頼 |
| 300万〜500万円 | 不要だが、スポット依頼の検討を | 記帳は自分で行い、確定申告は税理士にスポット依頼が効率的 |
| 500万〜1,000万円 | 事業内容による | 取引が複雑なら顧問契約を検討。シンプルならスポット依頼でも可 |
| 1,000万〜3,000万円 | 顧問契約を推奨 | 消費税対応が必要。月額1.5〜3万円で顧問税理士をつけるのが安心 |
| 3,000万円以上 | 顧問契約はほぼ必須 | 法人化も含めた総合的な税務戦略が必要。月額3〜5万円が目安 |
顧問税理士を「つけない」と決めたら最低限やるべきこと
顧問税理士なしでやると決めた場合でも、以下の3点は最低限押さえておくべきです。
クラウド会計ソフトで日々の記帳を習慣化する
確定申告の直前にまとめて記帳しようとすると、漏れやミスが発生しやすくなります。クラウド会計ソフトで銀行口座やクレジットカードを連携させ、週1回は取引内容を確認する習慣をつけてください。溜め込むほど処理が面倒になり、結局税理士に丸投げすることになるパターンは定番です。
年に1回は税理士にスポットでチェックしてもらう
顧問契約を結ばなくても、年に1回、確定申告前のタイミングで税理士に帳簿のチェックを依頼することをおすすめします。自分では気づかない計上ミスや控除の見落としを指摘してもらえるため、「保険」として機能します。費用は1〜3万円程度で収まることが多いです。
税制改正の情報は毎年チェックする
税制は毎年のように改正されます。控除額の変更、新しい特例の創設、電子帳簿保存法の要件変更など、知らないうちに制度が変わっていることは珍しくありません。顧問税理士がいれば改正情報を共有してもらえますが、自力でやるなら国税庁のウェブサイトや税務関連のニュースを定期的に確認する必要があります。
「いらない」と思っていたのに必要になった事例
編集部が調査したところ、「顧問税理士はいらない」と考えていた事業主が、結局契約を結ぶことになるパターンには共通点があります。
売上が急成長して処理が追いつかなくなった
年商300万円でスタートしたフリーランスが、2〜3年で年商1,500万円に成長するケースは珍しくありません。売上が増えると取引件数も増え、消費税の課税事業者にもなるため、自力での対応に限界が来ます。成長が見込める事業であれば、早めに顧問税理士を確保しておく方が結果的にスムーズです。
自力で申告した結果、税務調査で指摘を受けた
自分で確定申告をしていた事業主が、税務調査で経費の否認や計上ミスを指摘され、追徴課税を受けるケースがあります。追徴課税には本来の税額に加えて延滞税や過少申告加算税が上乗せされるため、結果的に顧問税理士を雇うよりも高くつくことになります。
税理士にかかる費用を「コスト」と捉えるか「保険」と捉えるかで、判断は変わります。
顧問税理士が必要かどうかは「手間」と「リスク」で判断する
結局のところ、顧問税理士が必要かどうかは、「自分で処理する手間」と「ミスをした場合のリスク」のバランスで判断するのが合理的です。
年商が小さく、取引もシンプルであれば、手間もリスクも小さいため顧問契約は不要です。一方、年商が大きくなり、消費税や従業員の給与計算が絡んでくると、手間もリスクも急激に大きくなります。
「顧問税理士はいらない」と結論を出す前に、自分の事業が今後どう変化するかも含めて判断してください。今は不要でも、半年後には必要になる可能性は十分にあります。
顧問料の具体的な費用感は法人の税理士顧問料の相場で売上規模別にまとめています。個人事業主の方は個人事業主に税理士は必要か?も参考にしてください。
最後に
顧問税理士が必要かどうかは、事業の規模・複雑さ・今後の成長見込みによって変わります。年商1,000万円以下でシンプルな事業であれば、クラウド会計ソフトとスポット依頼の組み合わせで十分対応できます。一方、消費税の課税事業者になったり従業員を雇ったりする段階では、顧問税理士をつけた方が結果的に安くつくケースが多いです。
「自分の場合はどうなのか」を判断するには、実際に税理士に相談してみるのが最も確実です。税理士ドットコムの無料紹介サービスなら、顧問契約の要否も含めて相談できます。まずは自分の事業に顧問税理士が必要かどうか、プロの意見を聞いてみてください。











