「税理士に頼むと何をやってくれるのか、いまいちわからない」という方は多いです。結論として、税理士の業務は税理士法で定められた3つの独占業務を軸に、記帳代行や経営相談まで幅広くカバーしています。この記事では、税理士に依頼できる業務・依頼できない業務を一覧で整理し、どこまで頼めるのかを明確にします。
この記事の目次
税理士には法律で定められた3つの独占業務がある
税理士の業務は、税理士法第2条で明確に定められています。税理士だけが行える業務(独占業務)は以下の3つです(出典 e-Gov法令検索 税理士法)。
| 独占業務 | 内容 |
|---|---|
| 税務代理 | 納税者に代わって確定申告・税務調査の対応・不服申立てなどを行う |
| 税務書類の作成 | 確定申告書・届出書・請求書など税務署に提出する書類を作成する |
| 税務相談 | 税金の計算方法や節税の方向性など、税務に関する相談に応じる |
この3つは税理士(または税理士法人)でなければ行えません。無資格者がこれらの業務を行うと、税理士法第52条違反として罰則の対象になります。知人や無資格のコンサルタントに確定申告を代行してもらうのは違法行為にあたるため注意が必要です。
税務代理は「申告」だけでなく「税務調査の立会い」も含まれる
税務代理と聞くと確定申告の代行をイメージしがちですが、実際にはもっと広い範囲をカバーしています。税務署からの調査が入った場合の立会いや対応、処分に不服がある場合の審査請求なども税務代理に含まれます。
特に税務調査の対応は、税理士がいるかどうかで結果が大きく変わる場面です。(正直、税務調査の連絡が来てから慌てて税理士を探す方が多いですが、顧問契約を結んでいれば最初から税理士が窓口になるので精神的な負担がまったく違います)
税務相談は「ちょっとした質問」でも独占業務にあたる
「この経費は認められますか」「青色申告と白色申告のどちらが得ですか」といった質問への回答も、税理士の独占業務である税務相談に該当します。友人の経理担当者や無資格のファイナンシャルプランナーが個別の税務判断を示すことは、厳密には税理士法違反です。
無料の税務相談は各地域の税理士会が定期的に開催しているほか、税務署でも受け付けています。まずはこうした公的な窓口を利用するのが確実です。
独占業務以外にも税理士に依頼できる業務は多い
税理士に依頼できるのは、独占業務の3つだけではありません。税理士法第2条の2では、独占業務に付随する「付随業務」も税理士が行えると定められています。実際に多くの税理士事務所が対応している業務を整理します。
記帳代行・経理業務は最も依頼が多いサービス
日々の取引を帳簿に記録する記帳代行は、税理士への依頼で最もニーズが高い業務です。領収書や請求書を渡すだけで、仕訳入力から試算表の作成までやってもらえます。
- 日々の仕訳入力・帳簿作成
- 領収書・請求書の整理
- 月次試算表・残高試算表の作成
- 給与計算・年末調整
記帳代行の費用は月額5,000〜1万円程度が相場です。(自分でやれば無料ですが、毎月数時間を経理に使うなら、その時間で本業に集中した方が結果的に得というケースがほとんどです)
決算書の作成と申告は税理士の中核業務
個人事業主の確定申告、法人の決算申告は、税理士に依頼する最も代表的な業務です。損益計算書や貸借対照表といった決算書の作成から、税務署への申告書提出まで一括で対応してもらえます。
費用の目安は以下の通りです。
| 依頼内容 | 費用の目安 |
|---|---|
| 個人の確定申告(白色) | 5〜10万円 |
| 個人の確定申告(青色) | 10〜20万円 |
| 法人の決算申告 | 15〜30万円 |
顧問契約を結んでいる場合、決算料は月額顧問料とは別に請求されるのが一般的です。見積もり時に「決算料込みかどうか」は必ず確認してください。
経営アドバイス・資金繰り相談にも対応する税理士は増えている
近年は、単なる税務処理だけでなく経営面のサポートを提供する税理士が増えています。具体的には以下のような相談が可能です。
- 月次の試算表をもとにした経営分析
- 資金繰り表の作成・キャッシュフロー改善のアドバイス
- 融資申込時の事業計画書作成の支援
- 役員報酬の設定に関する相談
ただし、経営コンサルティングの深さは税理士によって大きく異なります。顧問料が同じでも「帳簿をチェックするだけ」の税理士と「経営数字の見方まで教えてくれる」税理士では、サービスの質に大きな差があります。契約前に「どこまで相談に乗ってもらえるか」を確認するのが重要です。
顧問契約で受けられるサービスの具体的な中身
税理士と顧問契約を結ぶと、毎月の顧問料を支払う代わりに継続的なサポートを受けられます。顧問契約に含まれる標準的なサービスは以下の通りです。
| サービス内容 | 顧問料に含まれることが多い | 別料金になることが多い |
|---|---|---|
| 税務相談(随時) | ○ | |
| 月次の帳簿チェック | ○ | |
| 決算・申告書作成 | ○ | |
| 記帳代行 | ○ | |
| 年末調整 | ○ | |
| 税務調査の立会い | ○ |
顧問料の相場は、個人事業主で月額1〜3万円、法人で月額2〜5万円が目安です。(「月額1万円」と表示している事務所でも、決算料が別途10〜20万円かかるケースが大半なので、年間の総額で比較することをおすすめします)
顧問契約の最大のメリットは「いつでも相談できる安心感」
スポットで確定申告だけ依頼する場合と比べて、顧問契約の最大の価値は「困ったときにすぐ相談できる」点にあります。事業を運営していると、取引先との契約内容や経費の判断など、日常的に税務に関わる判断を求められる場面があります。
こうした判断を都度自分で調べるのは時間がかかりますし、誤った判断をすれば後から税務署に指摘されるリスクもあります。顧問税理士がいれば、メールや電話で気軽に確認できるため、本業に集中できます。
税理士に頼めないこと・税理士の業務範囲外の仕事
税理士は税務の専門家ですが、何でも対応できるわけではありません。以下の業務は税理士の範囲外、または他の専門家の独占業務となります。
社会保険・労務手続きは社会保険労務士の業務
従業員の社会保険加入手続き、雇用保険の届出、就業規則の作成などは社会保険労務士(社労士)の独占業務です。税理士に給与計算を依頼することはできますが、社会保険や労務関連の手続きそのものは社労士に依頼する必要があります。
ただし、税理士事務所の中には社労士と提携しているところも多く、ワンストップで対応してもらえるケースもあります。
登記手続きは司法書士の業務
法人設立時の登記申請、役員変更登記、本店移転登記などは司法書士の独占業務です。法人化を検討する際、税理士に相談すること自体は問題ありませんが、登記の実務は司法書士に依頼することになります。
許認可申請は行政書士の業務
建設業許可や飲食店営業許可など、行政への許認可申請は行政書士の業務です。税理士はこれらの書類を作成・提出することはできません。
法的トラブルの解決は弁護士の業務
取引先との契約トラブル、未払い金の回収、損害賠償請求などの法律問題は弁護士の業務です。税務に関連する訴訟でも、法廷での代理は弁護士が行います。(税理士は補佐人として出廷することは可能です)
以下に、士業ごとの業務範囲を整理します。
| 業務内容 | 依頼先 |
|---|---|
| 確定申告・決算・税務相談 | 税理士 |
| 社会保険・労務手続き | 社会保険労務士 |
| 登記申請(法人設立・変更) | 司法書士 |
| 許認可申請 | 行政書士 |
| 法的トラブル・訴訟 | 弁護士 |
税理士に依頼すべきかどうかの判断基準
税理士の業務範囲がわかっても、「自分の状況で本当に依頼すべきか」が気になるところです。以下の基準を参考にしてください。
年商500万円を超えたら税理士への依頼を検討すべき
年商が500万円を超えてくると、取引の数が増え、経費の判断も複雑になります。このあたりから自力で正確な帳簿をつけるのが難しくなり、税理士に依頼した方が結果的にコストパフォーマンスが良くなるケースが多いです。
消費税の課税事業者になったら税理士は必須に近い
年商1,000万円を超えると消費税の課税事業者になります。消費税の計算は所得税・法人税とは別の知識が必要で、本則課税と簡易課税の選択や、インボイス制度への対応など、判断を誤ると大きな損失につながります。
消費税の申告が必要になった段階では、税理士への依頼はほぼ必須と考えてください。
法人化したタイミングも税理士に依頼する好機
個人事業主から法人へ移行すると、法人税・法人住民税・法人事業税など、申告すべき税目が一気に増えます。決算書の作成も個人より格段に複雑になるため、法人化を機に税理士と顧問契約を結ぶのが一般的です。
税理士選びで確認すべきポイント
税理士に依頼する業務の範囲がわかったら、次は「どの税理士に頼むか」です。業務内容の理解をもとに、自分に合った税理士を選ぶポイントを押さえておきましょう。
「何をどこまでやってくれるか」を契約前に明確にする
税理士事務所によって、顧問契約に含まれるサービスの範囲は異なります。以下の点は必ず契約前に確認してください。
- 記帳代行は含まれるか、別料金か
- 決算料・申告料は月額顧問料に含まれるか
- 税務相談は回数制限があるか、随時対応か
- 税務調査の立会い費用は別途発生するか
- 経営に関する相談にも乗ってもらえるか
これらを曖昧にしたまま契約すると、後から「追加料金がかかると思わなかった」というトラブルになります。見積もり時に書面で確認するのが確実です。
レスポンスの速さは費用以上に重要
税理士を選ぶ際、費用の安さだけで判断する方がいますが、実務で最も差がつくのはレスポンスの速さです。質問してから1週間以上返答がない税理士と、翌営業日には回答がくる税理士では、事業運営への影響がまったく違います。
目安として、メールや電話の問い合わせに対して3営業日以内に返答がある事務所を選ぶのが無難です。複数の税理士を比較したい場合は、税理士紹介サービスを利用すると、条件に合った税理士を効率的に見つけられます。
よくある誤解と実態
「税理士は確定申告の時期だけ頼めばいい」は半分正解で半分間違い
確定申告だけをスポットで依頼することは可能です。ただし、申告直前にまとめて依頼すると、1年分の帳簿を短期間で整理する必要があるため、費用が割高になりがちです。
また、年間を通じて帳簿の状況を把握していない税理士に申告だけ頼んでも、節税の余地を見落とされる可能性があります。(顧問契約なしで確定申告だけ依頼するのは「健康診断だけ受けて普段は医者に行かない」のと似ています)
「税理士に頼めば節税してもらえる」は期待しすぎ
税理士に依頼すれば自動的に税金が安くなるわけではありません。税理士ができるのは、適用可能な控除や特例を漏れなく適用すること、経費として認められるものを正しく計上することです。
つまり「本来受けられるはずの控除を取りこぼさない」ことが税理士の役割であり、魔法のように税金を減らせるわけではありません。とはいえ、控除の取りこぼしで数十万円損しているケースは実際に多いので、税理士に依頼する価値は十分にあります。
「AIや会計ソフトがあれば税理士は不要」は現時点では早い
クラウド会計ソフトやAIの進化により、記帳作業は大幅に効率化されています。しかし、税務判断や申告内容の正確性を担保する部分は、2026年時点ではまだ人間の専門家に任せた方が安全です。
会計ソフトはあくまで「記帳を楽にするツール」であり、「何を経費にできるか」「どの届出を出すべきか」といった判断は税理士に確認する必要があります。(会計ソフトに仕訳を入れても、その仕訳自体が正しいかどうかは別問題です)
税理士の業務一覧まとめ
ここまでの内容を、依頼できる業務と依頼できない業務の一覧で整理します。
| 分類 | 業務内容 | 対応可否 |
|---|---|---|
| 独占業務 | 税務代理(確定申告・税務調査対応) | ○ |
| 独占業務 | 税務書類の作成 | ○ |
| 独占業務 | 税務相談 | ○ |
| 付随業務 | 記帳代行・帳簿作成 | ○ |
| 付随業務 | 決算書の作成 | ○ |
| 付随業務 | 給与計算・年末調整 | ○ |
| 付随業務 | 経営アドバイス・資金繰り相談 | ○(対応範囲は事務所による) |
| 付随業務 | 融資・事業計画書作成の支援 | ○(対応範囲は事務所による) |
| 業務範囲外 | 社会保険・労務手続き | ×(社労士の業務) |
| 業務範囲外 | 登記手続き | ×(司法書士の業務) |
| 業務範囲外 | 許認可申請 | ×(行政書士の業務) |
| 業務範囲外 | 法的トラブル・訴訟 | ×(弁護士の業務) |
税理士に依頼した場合の費用感は法人の税理士顧問料の相場で詳しく解説しています。実際に税理士を探す際は失敗しない税理士の選び方もあわせてご覧ください。
最後に
税理士に依頼できる業務は、確定申告や税務相談といった独占業務から、記帳代行・経営相談まで幅広くあります。一方で、社会保険手続きや登記など、他の士業の独占業務には対応できません。大切なのは、自分が何を依頼したいのかを明確にした上で、そのニーズに合った税理士を選ぶことです。
全国には約8万人の税理士が登録しており(出典 日本税理士会連合会 税理士登録者数)、事務所ごとに得意分野や対応範囲は異なります。複数の税理士を比較して、自分に合った税理士を見つけることが最も確実な方法です。
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