作成日:2026.04.10  /  最終更新日:2026.03.19

クラウド会計ソフト対応の税理士を選ぶメリットと確認ポイント

クラウド会計ソフトを導入したものの、税理士とのデータ共有がうまくいかない。あるいは、これからクラウド会計を始めるにあたって、対応できる税理士を探したい。この記事では、クラウド会計ソフトに対応した税理士を選ぶメリットと、契約前に確認すべきポイントを具体的に解説します。結論として、2026年時点ではほとんどの税理士がクラウド会計に対応していますが、「対応している」と「使いこなしている」には大きな差があります。

この記事の目次

クラウド会計ソフトの普及率は個人事業主で約4割に到達している

MM総研の調査によると、2025年3月末時点で個人事業主のクラウド会計ソフト利用率は38.3%に達しています。前年の33.7%から4.6ポイント増加しており、拡大傾向は続いています(出典 MM総研 クラウド会計ソフトの利用状況調査(2025年3月末))。

主要3サービスのシェアは弥生が55.4%、freeeが24.0%、マネーフォワードが14.3%で、上位3社で93.7%を占めています。つまり、税理士側もこの3つのソフトに対応できるかどうかが実質的な判断基準になります。

インボイス制度と電子帳簿保存法がクラウド移行を加速させた

クラウド会計ソフトの普及が加速した背景には、2023年10月のインボイス制度開始と、2024年1月の電子帳簿保存法の完全義務化があります。紙の請求書や領収書を手作業で管理する負担が増したことで、クラウド上で一元管理できるソフトへの移行が一気に進みました。

こうした制度変更に対応するため、税理士側もクラウド会計ソフトへの対応を迫られています。ただし、対応度合いには事務所によって大きな差があるのが実情です。

クラウド会計対応の税理士を選ぶと経理コストが下がる

クラウド会計ソフトに精通した税理士を選ぶ最大のメリットは、経理業務の効率化によるコスト削減です。具体的には、以下のような効果が見込めます。

銀行口座やクレジットカードの自動連携で記帳の手間が減る

クラウド会計ソフトの強みは、銀行口座・クレジットカード・電子マネーなどの取引データを自動で取り込める点です。この機能を使いこなせる税理士であれば、従来のように紙の領収書を一枚ずつ入力する手間が大幅に省けます。

記帳代行を税理士に依頼すると月額5,000〜1万円が相場ですが、自動連携を活用すれば記帳代行そのものが不要になるケースも少なくありません。(その分、顧問料を抑えられる可能性があります)

リアルタイムでデータを共有できるため面談の質が上がる

クラウド会計ソフトでは、税理士と事業主が同じデータをリアルタイムで確認できます。従来のように「USBや紙のファイルを持参して面談」という手間がなくなり、オンライン面談でも画面を共有しながら数字を確認できます。

これにより、月次の業績確認や資金繰りの相談がスムーズになります。特に、決算直前にまとめて処理するのではなく、月ごとに経理状況を把握できるのは大きなメリットです。

「対応している」と「使いこなしている」は別物と考えるべき

2026年時点で「クラウド会計に対応しています」と謳う税理士事務所は多数あります。しかし、実態としては対応レベルに大きな差があります。

対応レベルは3段階に分かれる

レベル 対応内容 実態
レベル1 データの受け取りのみ クラウド会計のデータを出力してもらい、事務所側の従来ソフトに取り込むだけ
レベル2 クラウド上で作業可能 事業主のアカウントにログインして仕訳確認や修正ができる
レベル3 導入支援から運用最適化まで ソフトの初期設定、自動仕訳ルールの構築、運用改善の提案ができる

レベル1の事務所は「対応している」とは言えますが、クラウド会計のメリットをほぼ活かせていません。自動連携やリアルタイム共有の恩恵を受けるには、最低でもレベル2以上の事務所を選ぶ必要があります。

ベテラン税理士ほどクラウド対応が遅れている傾向がある

日本税理士会連合会によると、2026年2月末時点の税理士登録者数は82,451人です(出典 日本税理士会連合会 税理士登録者数)。この中には長年インストール型の会計ソフトで業務を行ってきたベテラン税理士も多く含まれます。

経験豊富なベテラン税理士が悪いわけではありません。ただ、クラウド会計の運用サポートを期待するなら、事前にどの程度使いこなしているかを確認する必要があります。(「対応しています」の一言だけで判断すると、後から困るケースが多いです)

クラウド会計対応の税理士を探すときに確認すべき5つのポイント

クラウド会計に強い税理士を見極めるために、契約前に確認しておくべきポイントを整理します。

自分が使っているソフトへの対応実績があるか

弥生・freee・マネーフォワードの3つが主要ソフトですが、税理士によって得意なソフトが異なります。freeeに強い事務所もあれば、弥生オンラインを中心に使っている事務所もあります。自分が使っているソフト(またはこれから導入予定のソフト)に対応実績があるかを最初に確認してください。

  • 対応可能なクラウド会計ソフトの種類
  • そのソフトでの顧問先の件数
  • 認定アドバイザーや公認メンバーなどの資格の有無

初期設定や自動仕訳ルールの構築を手伝ってもらえるか

クラウド会計ソフトの導入で最もつまずきやすいのが初期設定です。銀行口座の連携設定、勘定科目のカスタマイズ、自動仕訳ルールの作成など、最初の設定次第でその後の運用効率が大きく変わります。

この初期設定を丸投げできるかどうかが、クラウド会計に強い税理士かどうかの分かれ目です。「ソフトは自分で設定してください」と言われる事務所は、レベル1に分類されると考えてよいでしょう。

チャットやオンラインでのやり取りに対応しているか

クラウド会計のメリットを最大限に活かすなら、コミュニケーション手段もクラウド化されている事務所が理想です。メールだけでなく、チャットツール(ChatworkやSlackなど)やZoomでの面談に対応しているかを確認しましょう。

特にフリーランスや小規模事業者の場合、わざわざ事務所に出向く時間がもったいないです。ちょっとした質問をチャットで気軽に聞ける環境があるかどうかは、日々の経理業務の負担に直結します。

記帳代行の範囲と費用が明確か

クラウド会計を使う場合、記帳代行の考え方が従来と変わります。自動連携でほとんどの仕訳が自動生成されるため、記帳代行の作業量自体が減るからです。

パターン 内容 費用目安(月額)
自分で記帳 自動仕訳の確認・修正を自分で行う 0円(顧問料のみ)
記帳チェック 自分で入力した内容を税理士が確認・修正 3,000〜5,000円
記帳代行 すべての記帳を税理士に任せる 5,000〜1万円

クラウド会計を使いこなせる税理士であれば、「記帳チェック」のプランを提案してくれることが多いです。自動仕訳で大部分はカバーできるため、フル記帳代行より費用を抑えられます。

顧問料にクラウド会計の運用サポートが含まれているか

顧問契約を結ぶ際に見落としがちなのが、クラウド会計ソフトの運用サポートが顧問料に含まれるかどうかです。ソフトのアップデート対応、新機能の活用提案、トラブル時のサポートなどが別料金になっていないかを事前に確認してください。

複数の税理士を比較検討したい場合は、税理士紹介サービスを利用すると、クラウド会計対応を条件に絞り込んで探せるので効率的です。

クラウド会計対応の税理士に依頼する費用相場は月額1〜3万円

クラウド会計に対応しているからといって、顧問料が大幅に高くなるわけではありません。一般的な顧問料の相場は以下の通りです。

事業形態 年商 月額顧問料の目安
個人事業主 500万円以下 月額1〜1.5万円
個人事業主 500万〜1,000万円 月額1.5〜2.5万円
法人 1,000万円以下 月額2〜3万円
法人 1,000万〜3,000万円 月額2.5〜4万円

むしろ、クラウド会計を活用することで記帳代行の作業量が減り、結果的に顧問料が抑えられるケースもあります。(自動仕訳で8割方カバーできるため、税理士側の手間も減るのが実情です)

決算料・申告料は別途かかるのが一般的

月額顧問料とは別に、年1回の決算・申告料が発生します。個人事業主の確定申告で5〜15万円、法人の決算申告で10〜25万円が目安です。この費用は顧問料に含まれている事務所と別料金の事務所があるため、見積もり時に必ず確認してください。

クラウド会計ソフトを導入していない場合は税理士と一緒に始めるのが効率的

まだクラウド会計ソフトを使っていない方は、税理士と契約するタイミングで一緒に導入するのが最も効率的です。理由は3つあります。

  • 初期設定を税理士に任せられるため、設定ミスのリスクが減る
  • 自分の事業に合ったソフトを税理士の目線でアドバイスしてもらえる
  • 導入直後から正しい運用ができるため、後から修正する手間が省ける

ソフト選びは税理士の得意分野に合わせるのが現実的

「どのクラウド会計ソフトがベストか」は事業内容によって異なりますが、現実的には税理士が使い慣れているソフトに合わせるのが無難です。税理士側の操作スキルが高いほど、サポートの質が上がるためです。

主要3ソフトの特徴を簡単に整理すると以下の通りです。

ソフト 特徴 向いている事業者
弥生オンライン 操作が直感的で初心者向け。シェアNo.1 個人事業主、簿記知識がない方
freee 請求書発行や経費精算まで一体化 スタートアップ、IT系事業者
マネーフォワード 他のMFサービスとの連携が強い 給与計算や請求書も一元管理したい法人

どのソフトを選んでも基本的な会計機能に大きな差はありません。それよりも、担当する税理士がそのソフトをどれだけ使いこなしているかの方が重要です。

クラウド会計を使うなら電子申告にも対応した税理士を選ぶべき

クラウド会計ソフトを導入するなら、電子申告(e-Tax)にも対応した税理士を選ぶことをおすすめします。国税庁の発表によると、令和5年度の所得税申告におけるe-Tax利用率は69.3%に達しています(出典 国税庁 e-Taxの利用状況等)。

クラウド会計ソフトからe-Taxへの直接連携に対応している税理士であれば、申告書の作成から提出までをオンラインで完結できます。紙の書類を税務署に持参する手間がなくなるだけでなく、青色申告特別控除(最大65万円の所得控除)を満額で受けるためにも電子申告は必須条件です。

電子帳簿保存法への対応もセットで確認する

2024年1月から電子取引のデータ保存が完全義務化されました。メールで受け取った請求書やPDFの領収書は、紙に印刷して保存する方法が認められなくなっています。クラウド会計ソフトにはこの電子帳簿保存法に対応した機能が搭載されていますが、正しく運用するには設定と運用ルールの整備が必要です。

この点もクラウド会計に詳しい税理士であれば、適切な保存方法と運用フローを提案してもらえます。(電子帳簿保存法の要件を正しく理解していない税理士も実はまだ多いです)

税理士を変更する場合のクラウド会計データの引き継ぎは意外とスムーズ

現在の税理士がクラウド会計に対応していない場合、税理士の変更を検討する方もいるでしょう。クラウド会計ソフトを使っている場合、データの引き継ぎは比較的スムーズに進みます。

クラウド上のデータはそのまま新しい税理士と共有できる

クラウド会計ソフトのデータはクラウド上に保存されているため、新しい税理士にアカウントへのアクセス権を付与するだけで引き継ぎが完了します。インストール型のソフトのように、データのエクスポート・インポートで苦労することはほぼありません。

  • 旧税理士のアカウント権限を削除する
  • 新しい税理士にメンバー招待を送る
  • 過去データの確認と引き継ぎ面談を行う

ただし、税理士の変更は決算期の直後に行うのが理想です。期中での変更は仕訳の引き継ぎが煩雑になるため、タイミングには注意してください。

最後に

クラウド会計ソフトに対応した税理士を選ぶことで、記帳の手間が減り、リアルタイムでの経営状況の把握が可能になります。ただし、「対応している」と「使いこなしている」の間には大きな差があるため、契約前に対応レベルを具体的に確認することが重要です。

確認すべきポイントは、自分が使うソフトへの対応実績、初期設定の支援体制、コミュニケーション手段、費用の内訳の4点です。これらを押さえた上で、複数の税理士を比較検討してください。

税理士選びで迷っている方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。クラウド会計ソフトへの対応を条件に、希望に合った税理士を無料で紹介してもらえます。

執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。