作成日:2026.04.20  /  最終更新日:2026.03.19

生前贈与を税理士に相談するメリットと贈与税の基本ルール

生前贈与は相続税の負担を軽減する手段として広く知られていますが、贈与税の仕組みや制度改正の内容を正確に理解しないまま進めると、かえって税負担が増えるケースがあります。この記事では、生前贈与を税理士に相談すべき理由と、贈与税の基本的なルールを整理します。結論として、生前贈与は「やるかどうか」よりも「どうやるか」が重要であり、税理士への相談が失敗を防ぐ最も確実な手段です。

生前贈与は税理士に相談してから始めるべき

生前贈与を自分だけの判断で進めてしまうと、制度の適用ミスや申告漏れによって想定外の税負担が発生するリスクがあります。特に2024年以降の税制改正で贈与税・相続税のルールが大きく変わっており、ネット上の古い情報を鵜呑みにして進めるのは危険です。

税理士に相談する最大のメリットは、贈与する側・受け取る側の財産状況や家族構成を踏まえたうえで、最適な贈与の方法を設計してもらえる点です。暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶべきか、年間いくら贈与するのが効率的かといった判断は、相続財産の総額や相続人の人数によって答えが変わります。(正直、ネットの記事だけで判断できるものではありません)

税理士に相談するメリットは「制度選択の最適化」にある

暦年課税と相続時精算課税の選択を間違えると取り返しがつかない

生前贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方法があります。どちらを選ぶかによって、最終的な税負担が大きく変わります。特に相続時精算課税は一度選択すると暦年課税に戻せないため、選択の判断は慎重に行う必要があります。

税理士は、相続財産の総額・推定相続人の人数・贈与したい財産の種類と金額を踏まえて、どちらの制度が有利かをシミュレーションしてくれます。この判断を自分だけで行うのは現実的に難しいです。

贈与契約書の作成や申告手続きも任せられる

生前贈与を実行する際は、贈与契約書の作成が欠かせません。口頭の約束だけでは、税務調査の際に「贈与の事実がなかった」と否認されるリスクがあります。税理士に依頼すれば、税務署に否認されない形で贈与契約書を作成し、必要に応じて贈与税の申告まで一括して対応してもらえます。

名義預金の指摘を防げる

生前贈与でよくある失敗が「名義預金」の指摘です。親が子どもの名義で口座を作り、通帳や印鑑を親が管理している状態で贈与したつもりになっているケースは、税務署から「実質的に親の財産」と認定される可能性があります。税理士に相談すれば、贈与の実態を伴う正しい方法をアドバイスしてもらえます。

贈与税の基礎控除は年間110万円

暦年課税の場合、贈与税には年間110万円の基礎控除があります。1月1日から12月31日までの1年間に受け取った贈与の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかかりません(出典 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税))。

ただし、この110万円は「贈与を受けた側」の合計額です。父から80万円、母から50万円を受け取った場合、合計130万円となり、20万円分に贈与税がかかります。複数人から贈与を受ける場合は合算される点を見落としがちです。

贈与税の税率は最大55%まで上がる

基礎控除の110万円を超えた部分には、累進税率で贈与税が課されます。税率は「一般税率」と「特例税率」の2種類があり、父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与には、税率が優遇された特例税率が適用されます(出典 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税))。

特例税率の税率表(直系尊属から18歳以上への贈与)

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10% なし
400万円以下 15% 10万円
600万円以下 20% 30万円
1,000万円以下 30% 90万円
1,500万円以下 40% 190万円
3,000万円以下 45% 265万円
4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

たとえば、父から500万円の贈与を受けた場合、基礎控除後の課税価格は390万円です。特例税率を適用すると、390万円 × 15% − 10万円 = 48万5,000円が贈与税額となります。贈与額が大きくなるほど税率が急激に上がるため、一度に高額を贈与するよりも、年数をかけて分割する方が税負担は軽くなります

相続時精算課税制度は2024年から使いやすくなった

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与に適用できる制度です。累計2,500万円まで贈与税が非課税となり、超過分には一律20%の税率が適用されます。ただし、贈与した財産は相続発生時に相続財産に加算され、相続税の対象となります(出典 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択)。

2024年以降は年間110万円の基礎控除が新設された

令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から、相続時精算課税にも年間110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除の範囲内の贈与であれば贈与税の申告は不要で、かつ相続発生時に相続財産への加算も不要です。

改正前は、相続時精算課税を選択すると少額の贈与でも毎回申告が必要だったため使い勝手が悪いと言われていました。基礎控除の新設により、毎年110万円以下の贈与を行う場合は相続時精算課税の方が有利になるケースも出てきています。(この判断こそ、税理士に相談すべきポイントです)

一度選択すると暦年課税に戻れない点に注意

相続時精算課税は、贈与者ごとに選択する制度です。一度選択すると、その贈与者からの贈与はすべて相続時精算課税が適用され、暦年課税に戻ることはできません。「とりあえず選択しておこう」という安易な判断は禁物です。

相続時精算課税と暦年課税のどちらが有利かは、相続財産の総額や相続人の構成によって異なります。制度の選択は税理士に相談したうえで判断してください。

生前贈与加算は3年から7年に延長された

暦年課税による生前贈与には「生前贈与加算」というルールがあります。贈与者が亡くなった場合、相続開始前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税が計算されます(出典 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税))。

従来この加算期間は「相続開始前3年以内」でしたが、令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から段階的に延長され、最終的には「相続開始前7年以内」まで拡大されます。

加算期間の段階的な延長スケジュール

相続開始日 加算対象期間
〜令和8年(2026年)12月31日 相続開始前3年以内
令和9年(2027年)1月1日〜令和12年(2030年)12月31日 令和6年1月1日から死亡日まで
令和13年(2031年)1月1日以後 相続開始前7年以内

この改正により、「毎年110万円以下の贈与を繰り返せば相続税を減らせる」という従来のセオリーが通用しにくくなっています。ただし、3年を超えて7年以内の贈与については、合計額から100万円を差し引いた金額が加算対象となる緩和措置があります。

加算期間の延長は、生前贈与の計画を早い段階で始めるべき理由の一つです。贈与を検討しているなら、できるだけ早く税理士に相談し、長期的な計画を立てることが重要になります。

税理士への相談費用は1万〜5万円が目安

生前贈与について税理士に相談する場合、費用は相談の内容や範囲によって異なります。

相談内容 費用の目安
初回相談(60分程度) 無料〜1万円
贈与税シミュレーション 3万〜5万円
贈与契約書の作成 1万〜3万円
贈与税の申告代行 3万〜10万円
相続対策の総合プラン策定 10万〜30万円

初回相談を無料で受けている事務所も多いため、まずは相談してみて、費用に見合うサポートが受けられるか確認するのが現実的です。生前贈与は一度実行すると取り消しが難しいため、相談費用は「保険料」と考えるべきです。(数万円の相談費用を惜しんで数百万円の税負担を増やしてしまっては本末転倒です)

相続税対策に強い税理士を選ぶべき

税理士にも得意分野があります。法人の顧問税理士として確定申告や記帳代行を中心に行っている税理士と、相続・贈与を専門に扱っている税理士では、生前贈与に関する提案力が大きく異なります。

  • 相続税の申告実績が年間10件以上あるか
  • 生前贈与や相続時精算課税のシミュレーション対応が可能か
  • 税制改正の最新情報を踏まえた提案ができるか
  • 不動産の評価や名義変更にも対応できるか

相続対策に強い税理士を自分で探すのは手間がかかります。税理士紹介サービスを利用すれば、相続・贈与に実績のある税理士を無料で紹介してもらえるため、効率的です。

生前贈与で失敗しやすい3つのパターン

贈与の事実を証明できず税務署に否認される

贈与契約書を作成していない、贈与した現金を手渡ししている、贈与を受けた側の口座を贈与した側が管理しているといったケースでは、税務調査で贈与の事実を否認されるリスクがあります。否認されると、その財産は相続財産として相続税の対象になります。

贈与の事実を証明するためには、以下の対応が基本です。

  • 贈与契約書を毎年作成し、署名・捺印する
  • 銀行振込で記録を残す(手渡しは避ける)
  • 贈与を受けた側が口座を自分で管理する
  • 基礎控除を超える場合は必ず贈与税の申告を行う

毎年同額を同じ時期に贈与して「定期贈与」と認定される

毎年110万円をきっちり同じ時期に贈与し続けると、「最初から総額○万円を贈与する約束があった」とみなされ、一括贈与として課税されるリスクがあります。これを「定期贈与」と呼びます。

リスクを下げるためには、贈与の金額を毎年変える、贈与の時期をずらす、毎年贈与契約書を作成するといった対策が有効です。税理士に依頼すれば、税務署に指摘されにくい贈与の実行方法を具体的にアドバイスしてもらえます。(この点は自己流で対処するより、プロに任せた方が安全です)

制度改正を知らずに古いやり方で贈与を続ける

2024年の税制改正で、生前贈与加算の期間延長や相続時精算課税の基礎控除新設など、ルールが大きく変わりました。改正前の情報に基づいて贈与を続けていると、想定していた効果が得られない可能性があります。

特に、生前贈与加算の7年延長は影響が大きく、従来の「毎年110万円ずつ贈与する」という手法の効果が薄れています。現行の税制に合った贈与計画を立てるためにも、税理士への相談は欠かせません。

生前贈与を税理士に相談するタイミングは早い方がよい

生前贈与は、時間をかけて計画的に行うほど効果が高まります。加算期間が7年に延長されたことを考えると、贈与を始めるタイミングが遅くなるほど、相続税の軽減効果は限定的になります。

以下のような状況にある方は、早めに税理士への相談を検討してください。

  • 相続財産が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える見込みがある
  • 不動産や自社株など、分割しにくい財産が多い
  • 子や孫への資金援助を検討している
  • 相続人の間でトラブルが起きる可能性がある
  • 暦年課税と相続時精算課税のどちらを選ぶべきかわからない

「相続が発生してから税理士に相談する」という方が多いですが、相続が発生した後では生前贈与による対策はもう打てません。相続対策は生前に行うからこそ意味があり、早く始めるほど選択肢が広がります。70代・80代になってから慌てて贈与を始めても、加算期間の延長により効果が限定的になる可能性があります。

最後に

生前贈与は相続税の負担を軽減する有効な手段ですが、2024年の税制改正により、従来のセオリーが通用しなくなっている部分もあります。暦年課税と相続時精算課税の選択、贈与のタイミングや金額の設計、名義預金の回避など、実務上の注意点は多岐にわたります。

自己判断で進めて後から「こうすればよかった」と気づいても、贈与は基本的にやり直しがききません。まずは相続・贈与に強い税理士に相談し、自分の家族構成や財産状況に合った計画を立てることが、最も確実な方法です。

税理士選びで迷っている方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。相続・贈与に実績のある税理士を無料で紹介してもらえます。

執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。