動物病院の経営は、診療報酬と物販の区分、高額な医療機器の減価償却、開業時の数千万円規模の設備投資、勤務獣医師の給与・社保管理など、一般的な業種とは異なる税務上の論点が多い分野です。さらに動物医療は人間の医療と違い、原則すべての売上が消費税の課税対象となるため、消費税の処理も複雑になります。この記事では、動物病院・獣医師の経営に強い税理士5社の料金体系と特徴を比較し、開業時や顧問契約時の費用相場、税理士選びのポイントを解説します。結論として、動物病院は同業の顧問実績が多い税理士に依頼することで、業界水準の数値比較や設備投資のタイミング判断が可能になります。
この記事の目次
動物病院の税務は「全売上が課税」「高額減価償却」「物販区分」の3点が特殊
動物病院の税務が他業種と大きく異なるのは、保険診療がない(自由診療のみ)こと、超音波・X線・血液検査機器など数百万円〜数千万円単位の医療機器を保有すること、診察と並行してフード・薬・ペット用品を物販することの3点に集約されます。
動物医療の売上は原則すべて課税売上で消費税課税事業者になる病院が多い
人間の医療は社会保険診療が非課税売上ですが、動物病院の診療報酬はすべて課税売上です。年間課税売上が1,000万円を超えれば翌々年から消費税の課税事業者となり、診療報酬・フード・薬の販売すべてに消費税がかかります(出典 国税庁 No.6201 非課税となる取引)。
2023年10月のインボイス制度開始以降、動物病院でも適格請求書発行事業者の登録が必要になるケースが増えました。法人客(ペット保険会社や法人飼い主)からの請求対応では、インボイス対応が前提になっています。(個人事業の動物病院でも、年商1,000万円を超えるタイミングで顧問税理士をつけている院長が多いです)
診療報酬と物販(フード・薬・グッズ)の売上区分が経理の手間になる
動物病院では、診療料金と並行してドッグフード・キャットフード・サプリメント・シャンプー・首輪などの物販を行うのが一般的です。診療売上と物販売上は会計上は同じ課税売上ですが、経営分析の観点では分けて把握する必要があります。物販の粗利率と診療の粗利率は大きく異なるため、混在させると正確な利益構造が見えません。
レセコン(レセプト・コンピューター)と会計ソフトを連携させ、売上区分を自動で取り込める環境を構築できる税理士に依頼すると、月次の経営分析が効率化されます。
X線装置・超音波・手術台などの医療機器は7〜10年の減価償却対象
動物病院の主要な設備は、減価償却資産として複数年にわたって経費化します。耐用年数は資産ごとに法定で定められています(出典 国税庁 減価償却資産の耐用年数)。
| 設備 | 耐用年数の目安 | 取得価額の目安 |
|---|---|---|
| X線撮影装置 | 6年 | 300〜800万円 |
| 超音波診断装置 | 6年 | 200〜500万円 |
| 血液検査機器 | 6年 | 100〜300万円 |
| 手術台・無影灯 | 5〜8年 | 50〜200万円 |
| 内視鏡 | 6年 | 200〜400万円 |
| 麻酔器 | 6年 | 100〜300万円 |
開業時の設備投資は総額3,000万〜8,000万円規模になることが多く、減価償却計画と借入返済計画を税理士と連動させて立てる必要があります。(設備を一括で揃えるのか、段階的に追加するのかで、初年度の収支と借入額が大きく変わります)
動物病院に強い税理士5社の料金と特徴
動物病院・獣医師の顧問実績が豊富な税理士事務所5社をピックアップしました。各社の公開情報をもとに、料金体系と特徴を整理します。
ふるだて税理士事務所(豊島区南池袋)
- 個人事業 月額4,000円〜(年額128,000円〜)の業界最安水準
- 法人 月額6,000円〜(年額202,000円〜)
- 記帳代行・決算申告・税務相談・会計ソフト不要すべて込み
- 3ヶ月以内解約時の完全返金保証
動物病院専門に特化することで、業界平均(月2〜3万円)と比べて大幅に低料金化を実現している事務所です。記帳代行や会計ソフト料金が顧問料に含まれているため、追加料金が発生しにくい設計になっています。融資申込用の紹介状・チェックリスト作成も対応しているため、開業時や設備投資時の資金調達でも活用できます。
料金体系
| 区分 | 月額 | 年額 |
|---|---|---|
| 個人事業 | 4,000円〜 | 128,000円〜 |
| 法人 | 6,000円〜 | 202,000円〜 |
顧問料の安さを最優先したい個人開業の動物病院に向いています。(料金は規模・記帳量によって変動するため、見積もり時に必ず詳細を確認してください)
- 所在地
- 東京都豊島区南池袋1-13-23 JRE南池袋ビル5階
税理士法人YFPクレア(新宿・四谷ほか)
- 全国780件超の動物病院との財務比較分析が可能
- 売上規模別の料金プランが明示されている
- スタッフ採用・定着支援と助成金活用提案
- 個人事業から医療法人化までワンストップ対応
動物病院の顧問数が全国規模の事務所で、業界の財務指標と自院の数値を比較しながらアドバイスを受けられる点が強みです。チャットワークによる日常コミュニケーションが導入されており、レスポンスの速さも担保されています。新宿・四谷、さいたま・浦和、長野・松本にオフィスを構えています。
料金体系
| 売上高 | 月額 | 決算料 | 年間総額 |
|---|---|---|---|
| 3,000万円以下 | 29,000円 | 142,000円 | 490,000円 |
| 5,000万円以下 | 35,000円 | 170,000円 | 590,000円 |
| 1億円以下 | 45,000円 | 250,000円 | 790,000円 |
| 2億円以下 | 50,000円 | 290,000円 | 890,000円 |
| 3億円以下 | 55,000円 | 330,000円 | 990,000円 |
消費税申告は簡易課税で30,000円、本則課税で90,000〜160,000円が別途かかります。同業他院との比較データを基にした経営支援を求める動物病院に向いています。
- 所在地
- 東京都新宿区四谷三丁目(新宿・四谷オフィスほか、さいたま・浦和、長野・松本に支店あり)
ベッツサポート会計事務所(千代田区丸の内)
- 動物病院特化型の税理士法人で実績多数
- 東京駅至近の丸の内オフィス
- 小規模病院向けにセカンド支店も展開
- 動物病院の業界知識に深く、開業から事業承継まで対応
動物病院に完全特化した会計事務所で、東京駅徒歩圏の丸の内に本社を構えています。また小規模な動物病院向けに「ベッツサポート会計事務所 セカンド支店」を別途展開しており、開業初期で売上規模がまだ小さい病院にも対応しています。料金は個別見積もりで、病院規模・記帳量に応じて柔軟に提示される形式です。
料金の詳細は問い合わせベースでの確認となりますが、動物病院専門という強みを最大限活かしたい場合の選択肢になります。(料金が明示されていない事務所は見積もりで初めて金額がわかるため、複数社比較が前提になります)
- 所在地
- 東京都千代田区丸の内2-7-6 TK丸の内ビル4階
- 電話番号
- 03-5282-4175
税理士法人グスク(豊島区池袋)
- 全国300以上の動物病院データに基づくサポート
- 開業初期から40年近い長期経営院まで対応
- 事業承継・セカンドオピニオン対応
- 税務調査で指摘されやすい論点に強い
豊島区池袋を拠点に、動物病院の開業支援から事業承継まで幅広く対応する税理士法人です。「業績の読み方を院長自身が理解できるように支援する」スタンスを掲げており、過剰な設備投資による資金繰り悪化を防ぐコンサルティングを強みとしています。先代から事業を引き継ぐ2代目院長や、セカンドオピニオンを求める院長の利用も多い事務所です。
料金は売上規模・サービス内容によって個別見積もりとなります。長期的な経営パートナーを探している動物病院に適しています。
- 所在地
- 東京都豊島区池袋(池袋駅徒歩8分)
ステップ会計事務所(日野市)
- 顧問料 月額22,000円〜(安心ホワイトプラン)
- 領収書をそのまま渡せる記帳代行対応
- 30分無料相談あり
- 弁護士・社会保険労務士など各士業との提携
東京都日野市に拠点を置く会計事務所で、東京西部・川崎・相模原エリアの動物病院を中心にサポートしています。代表は馬場貞義税理士。多数の動物病院顧問実績があり、AI活用による領収書スキャンに対応しているため、記帳作業を簡素化したい院長に向いています。弁護士・社労士など他士業との連携も整っているため、勤務獣医師の労務問題や医療法人化の手続きでもワンストップ対応が可能です。
料金体系
| プラン | 月額 |
|---|---|
| 安心ホワイトプラン | 22,000円〜 |
記帳代行・年末調整・確定申告料込みの年間契約例として24万円(税別)の事例も公開されています。
- 所在地
- 東京都日野市日野本町2-16-36 日野グロリア201
動物病院の税理士費用は個人で年18〜25万円、法人で年40〜60万円が相場
動物病院の税理士顧問料は、個人経営で年間18〜25万円、医療法人化していると年間40〜60万円が相場です。売上規模が大きいほど顧問料も高くなる傾向があります。
売上規模別の顧問料目安
| 形態・売上規模 | 月額顧問料 | 年間総額(決算込) |
|---|---|---|
| 個人開業 売上3,000万円以下 | 1.5〜2.5万円 | 20〜35万円 |
| 個人開業 売上5,000万円以下 | 2〜3万円 | 30〜45万円 |
| 医療法人 売上1億円以下 | 3.5〜5万円 | 50〜80万円 |
| 医療法人 売上2億円以下 | 4.5〜6万円 | 70〜100万円 |
複数の税理士から見積もりを取って比較したい場合は、無料の税理士紹介サービスを活用すると、希望条件に合う税理士を効率的に探せます。
開業支援は別途20〜50万円が一般的
新規開業時の事業計画策定・融資サポート・開業時の税務届出は、顧問契約とは別に20〜50万円のスポット料金で対応する事務所が多いです。日本政策金融公庫からの融資(数千万円規模)を受ける場合、事業計画書の精度が融資可否を大きく左右するため、動物病院の融資実績が豊富な税理士に依頼するのが安全です。
動物病院に強い税理士を選ぶ4つのポイント
動物病院の顧問実績が10件以上あるか
動物病院は業界特性が強い分野のため、同業の顧問先を複数抱えている税理士でないと業界水準の数値感覚が得られません。動物病院の顧問実績を具体的な件数で公開している事務所、もしくは「動物病院専門」を明示している事務所を選ぶのが基本です。
レセコンと会計ソフトの連携環境を構築できるか
動物病院の経理を効率化する鍵は、レセコン(V-MOTIONなど)と会計ソフト(freee・マネーフォワードなど)の連携です。日々の診療売上データを手入力するのは現実的ではないため、API連携やCSV取り込みでの自動仕訳を提案できる税理士に依頼すべきです。
融資・設備投資のタイミング判断ができるか
動物病院は数年に一度のペースで医療機器の更新・追加が必要になります。減価償却の残高、借入残高、自己資本比率を踏まえた上で、「今の時期にこの設備を入れて大丈夫か」を判断できる税理士であれば、長期的な経営パートナーとして機能します。
勤務獣医師の社会保険・給与計算に対応できるか
動物病院は勤務獣医師(雇用獣医師)を雇うケースが多く、給与計算・社会保険手続き・労務管理が発生します。社会保険労務士と提携している税理士事務所なら、税務と労務をワンストップで任せられます。
動物病院の医療法人化は所得900万円超が目安
個人事業の動物病院が医療法人化を検討すべき所得水準は、おおむね年間900万円超です。所得税は累進課税で最高税率45%(住民税と合わせて約55%)ですが、法人税は中小企業で実効税率約23〜34%になるため、所得が高いほど法人化のメリットが大きくなります。
医療法人化のメリットとデメリット
| 項目 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 税負担 | 所得分散による節税 | 赤字でも法人住民税均等割(年7万円) |
| 役員報酬 | 給与所得控除が使える | 毎月定額(期中変更不可) |
| 退職金 | 退職所得控除で大幅節税 | 分院・拡大時の制約あり |
| 事業承継 | 法人格の維持で引継ぎが容易 | 都道府県知事の認可が必要 |
| 社会的信用 | 融資・採用で有利 | 設立費用30〜60万円 |
動物病院の医療法人化は人間の医療法人とは異なり、都道府県知事の認可ではなく一般的な株式会社・合同会社として設立するケースもあります(動物病院は医療法上の医療法人にはなりません)。形態の選択は税理士と相談しながら決めるのが一般的です。
動物病院は医療法上の「医療法人」を設立することはできません。法人化する場合は株式会社または合同会社が選択肢となります。形態の選択は事業規模・将来計画によって異なるため、税理士と相談の上で判断してください。
青色申告と消費税の届出は開業時に必ず提出する
青色申告承認申請書は開業から2ヶ月以内
個人開業の動物病院は、開業から2ヶ月以内に青色申告承認申請書を提出することで、最大65万円の青色申告特別控除や赤字の3年繰越が使えます(出典 国税庁 No.2070 青色申告制度)。
提出忘れで初年度を白色申告で過ごすと、控除額65万円分の所得税・住民税で20万円以上の損失になります。開業時の税務届出はミスが許されないため、税理士に依頼するのが確実です。
消費税は基準期間の課税売上で判定
消費税の課税事業者になるかどうかは、基準期間(個人事業は2年前)の課税売上が1,000万円を超えるかで決まります。インボイス制度開始後は、売上1,000万円以下でも適格請求書発行事業者として課税事業者を選択するケースが増えています。法人客が多い動物病院や、ペット保険会社との取引がある病院は、インボイス対応が事実上必須です。
動物病院特有の経費・税務上の論点
医薬品在庫は期末棚卸が必要
動物用医薬品・注射薬・予防薬は在庫として管理し、期末時点の在庫金額を棚卸計算で把握します。仕入れた医薬品をすべて当期の経費にすることはできず、期末在庫分は翌期に繰り越す必要があります。在庫管理を疎かにすると利益計算が狂い、税務調査で指摘されるリスクがあります。
白衣・手術着のクリーニング代は経費
業務で使用する白衣・手術着・消毒関連用品のクリーニング代は経費計上できます。プライベート使用と混在しないよう、業務専用の物品として明確に区分しておくことが重要です。
院長の研修費・学会参加費は経費
獣医師の継続教育のための学会参加費・研修費・専門書籍代は事業経費として計上できます。海外学会への参加費・渡航費も、業務関連性が明確であれば経費化可能です。経費計上の可否は具体的な状況によって判断が分かれるため、税理士に確認しましょう。
勤務獣医師を雇うタイミングで顧問税理士は必須
動物病院の経営が拡大し、勤務獣医師や動物看護師を雇用するタイミングは、税理士・社労士のサポートが必須となるフェーズです。給与計算・源泉徴収・年末調整・社会保険手続き・労働保険手続きが発生するため、院長一人で対応するのは現実的ではありません。
勤務獣医師の年収は400〜700万円が一般的で、社会保険料の事業主負担を含めると人件費は給与の1.15倍程度になります。雇用と同時に税理士・社労士と契約し、給与計算ルールを整備するのが定石です。
最後に
動物病院の税務は、診療売上と物販売上の区分、高額医療機器の減価償却、勤務獣医師の労務管理、消費税課税事業者としての処理など、業界特有の論点が多い分野です。同業の顧問先を多く抱える税理士に依頼することで、業界水準の数値比較や設備投資のタイミング判断が可能になります。開業時の事業計画策定や融資サポート、医療法人化の判断も、動物病院に強い税理士でなければ的確なアドバイスは得られません。
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