飲食店の経営は、現金取引の多さ・原価率の管理・アルバイトの給与計算など、他の業種にはない経理の難しさがあります。この記事では、飲食店経営者が税理士に依頼するメリット、開業時に必要な手続き、飲食業に強い税理士の選び方、そして費用の目安をまとめています。結論として、飲食店は税務調査の対象になりやすい業種であり、開業時から税理士をつけておくのが最も安全です。
この記事の目次
飲食店経営で税理士に依頼すべき理由は現金管理と原価率の把握
飲食店が税理士に依頼すべき理由は、日々の売上管理・原価管理・人件費管理の3つが同時に走るからです。これらを経営者一人でこなしながら店舗を回すのは現実的ではありません。特に開業直後は仕入先との交渉やスタッフの教育に追われるため、経理にまで手が回らないのが普通です。
現金売上の管理が甘いと税務調査で指摘されやすい
飲食店は現金商売の代表格です。国税庁が公表している「事業所得を有する個人の1件当たりの申告漏れ所得金額が高額な上位10業種」には、飲食業が常連として名を連ねています(出典 国税庁 令和5事務年度 所得税及び消費税調査等の状況)。
現金売上は記録を残しにくく、売上の計上漏れが起きやすい構造です。レジ締めの金額と帳簿の数字にズレがあれば、税務署から見れば「売上を抜いているのでは」と疑われます。税理士に依頼すれば、現金出納帳のつけ方やレジデータとの突合方法を仕組みとして整備してもらえるため、税務調査に入られても慌てずに済みます。
(実際、「税務調査が入ってから慌てて税理士を探す」という飲食店オーナーは少なくありません。そうなる前に手を打っておくべきです)
原価率(FL比率)の管理が経営改善の鍵になる
飲食店の経営指標で最も重要なのがFL比率です。FL比率とは、Food(食材原価)とLabor(人件費)を売上高で割った数値で、一般的に60%以下に収めるのが健全な目安とされています。
| 指標 | 理想値 | 危険水準 |
|---|---|---|
| 食材原価率(F) | 25〜35% | 40%以上 |
| 人件費率(L) | 25〜30% | 35%以上 |
| FL比率合計 | 55〜60% | 65%以上 |
飲食業に精通した税理士であれば、月次の試算表からFL比率を算出し、メニュー単価の見直しやロス削減の方向性を一緒に検討してくれます。経理を「記帳するだけの作業」ではなく「経営判断の材料」に変えてくれるのが、業界に強い税理士の価値です。
アルバイトの給与計算・源泉徴収・年末調整が煩雑
飲食店はアルバイトやパートの出入りが激しい業種です。時給制のスタッフが多いため、毎月の給与計算に加えて以下の事務処理が発生します。
- 源泉所得税の計算と毎月の納付(または納期の特例による半年一括納付)
- 年末調整(12月末在籍のスタッフ全員が対象)
- 扶養控除等申告書の回収と管理
- 退職者への源泉徴収票の発行
- マイナンバーの取得と管理
スタッフが5人を超えると、この事務作業だけで月に数時間は取られます。税理士に給与計算ごと任せれば、計算ミスや届出漏れのリスクもなくなります。(正直なところ、源泉徴収の手続きを完璧に理解している飲食店オーナーはほぼいません。ここはプロに任せるべき領域です)
飲食店の開業時に税理士に相談すべき手続き
飲食店は開業前後にやるべき手続きが集中します。保健所の営業許可や消防署への届出、食品衛生責任者の資格取得など、行政関連の手続きだけでも相当な量です。そこに気を取られ、税務関係の届出を後回しにしてしまう方が多いのが実態です。
開業届と青色申告承認申請は開業後2ヶ月以内に提出する
個人で飲食店を開業する場合、税務署に「個人事業の開業届出書」を提出します。提出期限は開業から1ヶ月以内です。同時に「青色申告承認申請書」も出しておくべきです。青色申告承認申請の期限は、開業日が1月1日〜1月15日なら3月15日まで、1月16日以降の開業なら開業日から2ヶ月以内です(出典 国税庁 No.2090 新たに事業を始めたときの届出など)。
青色申告を選ぶだけで最大65万円の所得控除が使えるため、この届出を出し忘れると初年度は白色申告になり、控除が受けられません。税理士に依頼すれば、開業届と一緒にまとめて処理してもらえます。
青色申告承認申請書の提出期限を過ぎると、その年度は白色申告しか選べません。開業準備で忙しい時期だからこそ、税務届出は税理士に一任するのが確実です。
創業融資(日本政策金融公庫)の事業計画書作成を税理士に任せる
飲食店の開業資金は、物件取得費・内装工事費・厨房設備費などで1,000万円前後かかるケースが一般的です。自己資金だけで賄えない場合、日本政策金融公庫の「新規開業資金」が有力な選択肢になります。
融資審査では事業計画書の内容が重要視されます。売上予測・原価率・損益分岐点の数字に説得力があるかどうかで、融資の可否が決まると言っても過言ではありません。日本政策金融公庫の新規開業資金では、融資限度額が7,200万円(うち運転資金4,800万円)に設定されており、飲食店の開業規模に十分対応できます(出典 日本政策金融公庫 新規開業資金)。飲食業の顧問実績がある税理士なら、業界水準の数値をベースにした現実的な事業計画書を作成してくれます。
(「自分で書いた事業計画書で融資に落ちた」というケースは多いです。数字のつじつまが合っていないと、審査担当者はすぐに見抜きます)
インボイス制度への登録判断は売上構成で決まる
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)への対応も、開業時に検討すべきテーマです。
飲食店の場合、一般消費者がメインの客層であればインボイス登録のメリットは薄いです。消費者は仕入税額控除を行わないため、適格請求書を求められることがほぼないからです。一方、法人の接待利用や宴会需要が多い店舗では、取引先から適格請求書の発行を求められる場面が出てきます。
登録すべきかどうかは売上構成によって判断が分かれるため、税理士に相談して決めるのが妥当です。飲食店の開業準備で手が回らない場合は、税理士紹介サービスを使って早めに相談先を確保しておくと安心です。
飲食店に強い税理士を選ぶポイント
税理士であれば誰でも飲食店の経理に対応できるわけではありません。業界特有の経理処理や経営指標に詳しい税理士を選ぶことで、単なる記帳・申告だけでなく経営のサポートまで受けられます。
飲食業界の顧問実績があり原価管理に精通しているか
飲食店の経理には、他業種にはない特徴があります。
- 日々の食材仕入れが多品目・多頻度(まとめ買いの仕訳が煩雑)
- 廃棄ロスの処理(棚卸しと原価計算のズレ)
- まかない費の取り扱い(福利厚生費か現物給与か)
- 開業費の繰延資産としての処理
- 内装工事の減価償却(耐用年数の判断)
これらの処理に慣れている税理士は、飲食店オーナーが「何を聞けばいいかわからない」段階から的確にリードしてくれます。初回面談で「飲食店の顧問先は何件ありますか」と聞くのが最もシンプルな見極め方です。5件以上の実績があれば、業界特有の論点を一通り経験していると判断できます。
月次で試算表を出してくれる事務所を選ぶ
飲食店は季節変動が大きい業種です。忘年会シーズンの12月と閑散期の2月では売上が倍以上違うこともあります。だからこそ、毎月の試算表(月次決算)をタイムリーに出してくれる税理士を選ぶべきです。
年に一度の確定申告時にまとめて数字を出す「年一決算」では、赤字に気づくのが遅れ、資金繰りが詰まる可能性があります。月次で数字を見ていれば、原価率の悪化や人件費の膨張を早期に発見できます。理想は翌月の15日までに前月の試算表が届くことです。それ以上遅れるようであれば、対応スピードの改善を依頼するか、事務所の変更を検討すべきです。
(年一でしか連絡をくれない税理士は、飲食店の顧問としては正直物足りないです。月次レポートの提供は必須条件として確認してください)
クラウド会計(freee・マネーフォワード)に対応しているか
飲食店の場合、POSレジ(エアレジ・スマレジなど)やキャッシュレス決済のデータをクラウド会計ソフトに自動連携できると、記帳作業が大幅に楽になります。freeeやマネーフォワードはこれらのPOSレジとの連携機能を備えており、日々の売上データを自動で取り込めます。
税理士がクラウド会計に対応していれば、リアルタイムでデータを共有でき、わざわざ領収書を郵送する手間もなくなります。2026年時点ではほとんどの税理士事務所がクラウド会計に対応していますが、念のため契約前に確認しておきましょう。
なお、クラウド会計を導入すると、銀行口座やクレジットカードの明細も自動取込できるため、食材以外の仕入れ(消耗品・備品など)の記帳もかなり楽になります。税理士との連携がスムーズになるだけでなく、経営者自身が数字を確認しやすくなるのも大きなメリットです。
飲食店経営者が税理士に依頼した場合の費用目安
飲食店経営者が気になるのは「結局いくらかかるのか」という点です。個人経営か法人かで相場が異なります。
個人経営の飲食店なら月額1〜3万円が相場
個人事業として飲食店を営んでいる場合、税理士の顧問料は月額1〜3万円が一般的な相場です。これに加えて、確定申告の際に別途5〜10万円の決算料がかかるケースが多いです。
| 年商 | 月額顧問料の目安 | 決算料の目安 |
|---|---|---|
| 500万円以下 | 月額1〜1.5万円 | 5〜8万円 |
| 500万〜1,000万円 | 月額1.5〜2.5万円 | 8〜12万円 |
| 1,000万〜3,000万円 | 月額2.5〜3万円 | 10〜15万円 |
月額1万円台の事務所でも、記帳代行や給与計算は別料金のケースがほとんどです。見積もりの段階で「記帳代行は含まれるか」「給与計算は別料金か」を必ず確認してください。(トータルで見ると「月額1万円」の事務所が最安とは限りません)
法人化した飲食店は月額3〜5万円が目安
法人として飲食店を経営している場合、月額顧問料は3〜5万円、決算料は15〜25万円が相場です。年間の総額にすると50〜85万円程度になります。法人は個人事業に比べて申告書類が増え、消費税申告や法人税申告など処理が複雑になるため、その分費用も高くなります。
ただし、法人化によって社会保険料の最適化や役員報酬の設計など、個人事業にはない検討事項が増えるため、税理士をつけないリスクの方がはるかに大きいです。多店舗展開を視野に入れている場合は、各店舗の損益管理を税理士に任せることで、不採算店舗の早期発見にもつながります。
開業時のスポット相談なら5〜10万円
「まだ顧問契約を結ぶ段階ではないが、開業届や融資の相談だけしたい」というケースもあるでしょう。スポットでの相談や届出書類の作成だけであれば、5〜10万円程度で対応してもらえる事務所が多いです。融資の事業計画書作成まで含めると10〜15万円が目安になります。
ただし、編集部としては開業時からの顧問契約をおすすめします。開業後すぐに日々の経理処理が始まるため、スポットで相談しても結局すぐに顧問契約を結ぶケースがほとんどだからです。最初から顧問契約にした方が、二度手間にならず、トータルのコストも抑えられます。
飲食店経営に強いおすすめ税理士事務所5選
ここからは、飲食店の税務・開業支援に実績のある税理士事務所を紹介します。いずれも飲食業界特有の現金管理・原価率管理・創業融資に精通した事務所です。
Credo税理士法人

- 飲食店専門No.1を目指す税理士法人
- 創業融資300件以上・累計30億円以上の実績
- 税務・財務・労務・法務の専門家による総合支援
飲食店に特化した税理士法人として、開業から経営サポート、多店舗展開までをワンストップで支援しています。創業融資300件以上・累計30億円以上の豊富な実績を持ち、税務調査にも即日対応可能です。
1店舗の個人事業主から多店舗展開の法人まで幅広く対応しており、飲食業界に特化しているだけあって現金商売特有の論点にも精通しています。(飲食店専門を掲げる税理士法人の中では最も実績が豊富な部類です)
料金体系
| 区分 | 月額顧問料(1店舗) | 決算報酬(年額) |
|---|---|---|
| 個人事業主 | 25,000〜35,000円 | 70,000〜110,000円 |
| 法人 | 25,000〜35,000円 | 100,000〜140,000円 |
| 記帳代行(1店舗) | 5,000円/月 | — |
| 消費税申告 | — | 36,000円〜 |
2店舗以上の場合は月額35,000〜49,000円に上がります。記帳代行は1店舗あたり月額5,000円で追加可能です。
おんだ飲食店専門税理士事務所

- 飲食店専門の税理士事務所・日本フードアカウンティング協会加盟
- 創業融資の採択率100%の実績
- 開業後の売上向上コンサルや販促ツール作成までサポート
飲食店に特化した税理士事務所で、日本フードアカウンティング協会に加盟しています。開業前の融資サポートから開業後の売上向上コンサル、販促ツール作成、オンラインセミナーまで包括的に対応しています。
創業融資の採択率100%を掲げており、これから飲食店を開業する方にとって心強いパートナーです。(税務だけでなく経営面のサポートまで受けられるのは飲食専門事務所ならではの強みです)
料金体系
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 顧問料・決算料 | 要問い合わせ |
| 初回相談 | 無料 |
料金は個別見積もりとなります。HPでは格安料金を訴求しているため、まずは無料相談で費用感を確認するのがおすすめです。
サン共同税理士法人

- 飲食店開業融資支援の専門税理士として年間200件以上の相談実績
- 無担保で最大2,000万円の融資実績あり
- 着手金0円の成功報酬型で融資サポート
飲食店の開業資金・創業融資に特化した支援を行う税理士法人です。着手金0円の成功報酬型で、年間200件以上の開業相談実績を持ちます。税理士・社労士・行政書士・司法書士によるワンストップサービスを提供しています。
特に日本政策金融公庫からの創業融資に強く、無担保で最大2,000万円の融資実績があります。(開業資金の調達に不安がある方は、まず相談してみる価値があります)
料金体系
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 創業融資サポート着手金 | 0円(成功報酬型) |
| 顧問料・決算料 | 要問い合わせ |
融資サポートは成功報酬型のため、融資が通らなければ費用は発生しません。顧問料は別途見積もりとなります。
西川一博税理士事務所

- 飲食店開業支援に注力(融資・店舗探し・コンセプト策定まで)
- 月1回の訪問で経営状況を把握するきめ細かいサポート
- 月額10,000円〜のリーズナブルな料金設定
大阪市福島区の税理士事務所で、飲食店の開業支援をワンストップで提供しています。日本政策金融公庫や民間金融機関との強固なパイプを活かした融資サポートに強みを持ち、開業後の経理処理・月次訪問まで対応しています。
月額10,000円〜というリーズナブルな料金設定が特徴で、開業したばかりの個人経営の飲食店でも無理なく依頼できます。(大阪エリアで飲食店に特化した事務所を探している方には特におすすめです)
料金体系
| 区分(年商) | 月額顧問料(税込) |
|---|---|
| 個人・1,000万円未満 | 10,000円 |
| 個人・1,000〜3,000万円未満 | 15,000円 |
| 個人・3,000〜5,000万円未満 | 22,000円 |
| 個人・5,000万〜1億円未満 | 27,500円 |
| 法人・3,000万円未満 | 16,280円 |
| 法人・3,000〜5,000万円未満 | 22,000円 |
| 法人・5,000万〜1億円未満 | 33,000円 |
| 記帳代行(100仕訳以内) | 11,000円/月 |
年商規模ごとに細かく料金が設定されており、小規模な飲食店でも月額1万円台から依頼できます。
税理士法人経営サポートプラスアルファ

- 飲食店専門の税務調査対応ノウハウ
- 現金商売特有の売上計上問題への対策支援
- 多店舗展開時の銀行対策・会計支援
飲食店の税務に精通した税理士法人で、現金商売特有の税務調査リスクへの対応に強みを持っています。創業融資サポートから多店舗展開時の銀行対策まで、飲食店経営のステージに合わせた支援を提供しています。
個人事業主は月額14,000円〜、法人は月額22,000円〜で顧問契約が可能です。(売上規模に応じた料金設定があり、成長に合わせてプランを調整できます)
料金体系
| 区分 | 月額顧問料(税別) | 決算・確定申告料(年額・税別) |
|---|---|---|
| 個人・売上1億円未満 | 14,000〜48,000円 | 100,000〜130,000円 |
| 法人・売上1億円未満 | 22,000〜55,000円 | 180,000円〜 |
| 法人・売上3億円未満 | 33,000〜82,500円 | 〜600,000円 |
| 会計入力料(個人) | 0〜20,000円/月 | — |
上記は税別表記です。売上規模や依頼内容によって料金が変動するため、見積もりを取って確認することをおすすめします。
最後に
飲食店経営は、現金売上の管理・食材原価のコントロール・スタッフの給与計算など、経理面で手のかかる業種です。税務調査の対象になりやすいという特性もあり、帳簿の正確性が他業種以上に求められます。これらを経営者一人で抱え込むと、本来集中すべき「お客様への料理とサービスの提供」に使う時間が圧迫されます。
飲食業に強い税理士に依頼すれば、日々の経理業務から解放されるだけでなく、FL比率の改善や資金繰りの見通しなど、経営判断に必要な数字をタイムリーに把握できるようになります。開業前後の届出や融資のサポートも含め、早い段階で信頼できる税理士を見つけておくことが、店舗経営の安定に直結します。
税理士選びで迷っている方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。飲食業の実績がある税理士を、希望の予算に合わせて無料で紹介してもらえます。











