建設業は、外注費の処理・工事原価の計算・建設業許可の維持など、他の業種にはない税務上の複雑さを抱えています。一人親方であっても法人であっても、建設業の会計処理を正確にこなすには業界特有の知識が必要です。この記事では、建設業の経営者や一人親方が税理士に依頼すべき理由と、建設業に強い税理士を見極めるポイントを解説します。
この記事の目次
建設業の税務が複雑な理由は外注費と工事原価の処理にある
建設業の経理は、製造業や小売業とは根本的に仕組みが異なります。工事ごとに原価を管理し、外注費と給与の区分を正しく行い、売上の計上タイミングも工事の進捗に応じて判断する必要があります。これらを誤ると税務調査で指摘されるリスクが高く、建設業は税務署から目をつけられやすい業種の一つです。
外注費と給与の区分を誤ると税務署から指摘される
建設業では、現場作業を外注先(一人親方など)に依頼するケースが多くあります。ここで問題になるのが、その支払いが「外注費」なのか「給与」なのかという区分です。
税務署はこの区分を厳しくチェックします。実態として指揮命令関係があり、時間的な拘束がある場合は、契約上「外注」としていても給与と認定される可能性があります(出典 国税庁 給与所得となる場合)。給与と認定されると、源泉所得税の追徴や消費税の仕入税額控除の否認など、大きな金額の追加負担が発生します。
判断のポイントとしては、以下のような要素が挙げられます。
- 仕事の依頼に対して諾否の自由があるか
- 業務遂行の方法や時間について指揮監督を受けているか
- 報酬が時間単位か、成果物に対して支払われているか
- 自分の道具や材料を使っているか、元請けから支給されているか
建設業に詳しい税理士であれば、これらの判断基準を熟知しており、契約書の整備や実態の確認を事前に行ってくれます。(正直、この区分は経営者だけで判断するには難しすぎます)
工事進行基準・完成基準の選択が利益計上のタイミングを左右する
建設業の売上計上には、大きく分けて「工事完成基準」と「工事進行基準」の2つの方法があります。
| 計上基準 | 売上を計上するタイミング | 主な適用場面 |
|---|---|---|
| 工事完成基準 | 工事が完成し引き渡した時点 | 中小規模の工事 |
| 工事進行基準 | 工事の進捗度に応じて期間按分 | 長期大規模工事(一定要件を満たすもの) |
どちらの基準を適用するかによって、その期の利益額が大きく変わります。工期が年度をまたぐ工事が多い建設業では、この選択が法人税額に直結します。たとえば、年度末に大型工事が完成するかどうかで、その年度の売上が数千万円単位で変動するケースもあります。
税理士に任せれば、工事の規模や工期に応じた適切な処理を行ってもらえます。特に複数の工事を同時に進行している場合は、工事台帳の管理から原価配賦の計算まで、専門的な対応が求められます。
建設業許可の維持に必要な決算書は税理士に任せるのが確実
建設業許可を取得・維持するには、毎年「決算変更届(事業年度終了届)」を提出する必要があります。この届出には建設業法に基づく様式の財務諸表が必要で、通常の税務申告用の決算書とは別に作成しなければなりません。
建設業に強い税理士であれば、税務申告と同時に建設業許可用の財務諸表も作成できます。行政書士との連携体制を持っている事務所も多く、許可の更新手続きまで一括でサポートしてもらえるケースもあります。(決算変更届を出し忘れると許可の更新ができなくなるため、ここは絶対に外せないポイントです)
一人親方がインボイス制度で直面する課題と税理士の役割
2023年10月に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、建設業界に大きな影響を与えています。特に一人親方にとっては、事業の存続に関わる判断を迫られる制度です(出典 国税庁 インボイス制度の概要)。
免税事業者のままだと元請けから取引を切られるリスクがある
年間売上1,000万円以下の一人親方は消費税の免税事業者です。しかしインボイス制度の下では、免税事業者からの仕入れは元請け側で消費税の仕入税額控除ができません。
経過措置として2026年9月までは80%、2029年9月までは50%の控除が認められていますが、この措置が終了すれば元請けの負担は増えます。結果として、インボイスを発行できない一人親方は、元請けから取引条件の見直しや契約打ち切りを求められるケースが実際に出ています。
特に建設業は重層下請構造が一般的であり、元請け→一次下請け→二次下請けと続く取引の中で、末端の一人親方がインボイスを発行できないと、上位の事業者全体に影響が波及します。課税事業者になるかどうかは、取引先との関係性や売上規模を踏まえて判断する必要があり、税理士に相談して方向性を決めるのが現実的です。
課税事業者になった場合の消費税申告は税理士に任せるべき
これまで免税事業者だった一人親方が課税事業者に転換すると、消費税の申告が新たに必要になります。消費税の計算は、売上にかかる消費税から仕入れにかかる消費税を差し引く仕組みですが、建設業では外注費・材料費・リース料など経費の種類が多く、正確な計算は簡単ではありません。
消費税の申告ミスは追徴課税につながります。特にこれまで確定申告を自力でこなしてきた一人親方でも、消費税の申告は難易度がまったく異なります。売上や経費を税率ごとに区分し、適格請求書の保存要件を満たしているか確認する作業は、慣れていない方にとって大きな負担です。
初めて消費税申告を行う場合は、税理士に相談して正しい処理方法を確認するのが確実です。(消費税は計算ミスが即追徴に直結するため、所得税の申告以上に慎重さが求められます)
簡易課税と本則課税の選択は事業内容で判断が分かれる
課税事業者になった場合、消費税の計算方法は「本則課税」と「簡易課税」の2つから選択できます(基準期間の課税売上高が5,000万円以下の場合)。
| 計算方法 | 仕組み | 建設業での傾向 |
|---|---|---|
| 本則課税 | 実際の仕入税額を差し引いて計算 | 材料費や外注費が多い場合に有利になりやすい |
| 簡易課税 | みなし仕入率(建設業は第三種 70%)で計算 | 外注費が少なく人件費中心の場合に有利になりやすい |
どちらが有利かは、外注費と材料費の割合、人件費の比率などによって変わります。一度選択すると2年間は変更できないため、税理士にシミュレーションしてもらった上で判断するのが賢明です。(ここを自己判断で間違えると、2年間にわたって余計な消費税を払い続けることになります)
建設業に強い税理士を選ぶポイント
税理士であれば誰でも建設業の税務に対応できるわけではありません。建設業には業界特有の会計処理や行政手続きがあるため、経験のある税理士を選ぶことが重要です。
建設業の顧問実績があり業界特有の会計処理を理解しているか
建設業の経理では、一般的な会計にはない勘定科目や処理方法を使います。
- 未成工事支出金(仕掛中の工事にかかった原価)
- 未成工事受入金(工事完了前に受け取った前受金)
- 工事原価の配賦(材料費・労務費・外注費・経費の工事別振り分け)
- 完成工事高と完成工事原価の対応
これらの処理に慣れていない税理士に依頼すると、決算書の精度が下がり、建設業許可の審査や金融機関の融資審査にも影響が出ます。たとえば、未成工事支出金を適切に計上していないと、工事途中の原価が一括で経費処理され、利益が実態とかけ離れた数字になることがあります。
初回の面談時に「建設業の顧問先は何社ありますか」と直接聞くのが一番確実な確認方法です。具体的な顧問先の業種や規模を聞けば、その税理士が建設業の実務にどこまで精通しているかが見えてきます。
経営事項審査(経審)の対策ができるか
公共工事を受注したい建設会社にとって、経営事項審査(経審)は避けて通れません。経審の評点(P点)は、経営状況分析(Y点)や技術力評価(Z点)などの複数の要素から算出され、この評点が入札参加資格に直結します(出典 国土交通省 経営事項審査)。
経審対策ができる税理士であれば、決算書の作成段階からP点を意識した経理処理を提案してくれます。たとえば、完成工事高の計上方法や兼業事業の区分など、会計処理の選択次第で評点が変わるポイントを把握しています。
逆に、経審をまったく知らない税理士に決算を任せると、評点が本来の実力より低く算出され、入札で不利になることがあります。公共工事の受注を視野に入れている建設会社であれば、経審の実績がある税理士を選ぶことは必須条件です。
資金繰り管理と融資支援の実績があるか
建設業は、工事の着手から完成・入金まで数カ月かかることが多く、資金繰りが厳しくなりやすい業種です。材料費や外注費は先に支払いが発生する一方で、売上の入金は工事完了後になるため、手元資金が不足しがちです。
建設業に強い税理士は、工事ごとの資金繰り表の作成や、金融機関への融資申請のサポートにも対応できます。特に日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資の申請では、税理士が作成した事業計画書があると審査がスムーズに進みます。
建設業は売掛金の回収サイクルが長く、手形取引が残っている現場もあります。資金ショートを起こさないためには、工事別の入出金スケジュールを把握し、必要に応じて短期借入やファクタリングなどの資金調達手段を検討する必要があります。こうした資金繰りの全体像を把握し、先手を打てる税理士がいるかどうかで、経営の安定度は大きく変わります。(融資の現場では「税理士が関与している」というだけで信用度が上がるのが実態です)
建設業の税理士費用の目安
建設業に特化した税理士だからといって、費用が極端に高いわけではありません。一般的な税理士費用の相場に近い水準で依頼できます。
一人親方なら月額1〜2万円が相場
| 依頼内容 | 費用の目安(月額) |
|---|---|
| 顧問契約(記帳は自分で行う) | 月額1〜1.5万円 |
| 顧問契約 + 記帳代行 | 月額1.5〜2.5万円 |
| 確定申告のみ(年1回) | 10〜20万円(年額) |
一人親方の場合、年間の売上規模が1,000万円以下であれば月額1万円台で依頼できる事務所は十分にあります。インボイス制度で課税事業者になった場合は消費税申告が加わるため、別途3〜5万円(年額)が上乗せされるのが一般的です。
(確定申告だけ単発で頼む方法もありますが、建設業は日常的に外注費や材料費の処理が発生するため、顧問契約を結んだ方がトータルでは安心です)
法人の建設会社は月額3〜5万円が目安
| 年商規模 | 月額顧問料の目安 | 決算申告料の目安 |
|---|---|---|
| 3,000万円以下 | 月額2〜3万円 | 15〜20万円 |
| 3,000万〜1億円 | 月額3〜5万円 | 20〜30万円 |
| 1億〜5億円 | 月額5〜8万円 | 30〜50万円 |
法人の場合は、法人税・消費税・地方税の申告に加え、建設業許可関連の財務諸表作成、経審対策なども依頼範囲に含まれることがあります。費用だけで比較するのではなく、建設業特有の業務にどこまで対応してくれるかを確認した上で判断するのが重要です。
上記の費用はあくまで一般的な目安です。事業規模・仕訳数・依頼内容によって変動するため、必ず複数の税理士から見積もりを取って比較してください。
建設業に強いおすすめ税理士事務所5選
ここからは、建設業の税務・建設業許可申請に実績のある税理士事務所を紹介します。いずれも建設業特有の工事原価管理・外注費処理・インボイス対応に精通した事務所です。
橋本税理士・行政書士事務所

- 税理士と行政書士の兼業で建設業許可申請と税務をワンストップ対応
- 建設業会計(工事進行基準等)の専門知識あり
- 顧問契約中は建設業許可の新規申請が12万円の割引価格
東京・池袋の税理士兼行政書士事務所です。建設業に特化し、決算申告から建設業許可の新規取得・更新まで一貫してサポートしています。会社設立時に許可取得を見据えた資本金・事業目的の設定もアドバイスしてくれます。
税理士と行政書士を兼業しているため、税務と許可申請を別々の事務所に依頼する手間がかかりません。(建設業では許可の維持が経営の生命線なので、この一元管理は非常に合理的です)
料金体系
| 年間売上 | 月額顧問料(訪問あり) | 月額顧問料(訪問なし) | 決算料 |
|---|---|---|---|
| 〜1,000万円 | 20,000円 | 10,000円 | 120,000円 |
| 1,000万〜3,000万円 | 20,000円 | 15,000円 | 150,000円 |
| 3,000万〜5,000万円 | 25,000円 | 20,000円 | 150,000円 |
| 5,000万〜7,000万円 | 30,000円 | 20,000円 | 200,000円 |
| 7,000万〜1億円 | 35,000円 | 25,000円 | 200,000円 |
| 1億〜5億円 | 50,000円 | 30,000円 | 300,000円 |
訪問なしプランを選べば月額1万円〜と、建設業専門としてはリーズナブルな料金設定です。
鈴木健志税理士事務所

- 代表が建設業界で8年間の現場勤務経験あり
- 建設業特有の税務・工期管理・労務管理に精通
- 資金調達・経営計画策定の専門知識
仙台の建設業専門税理士事務所です。代表の鈴木氏は建設業界での8年間の現場経験を持ち、業界特有の専門用語や商慣習を熟知しています。キャッシュフロー管理や資金調達にも強みがあります。
現場を知っている税理士だからこそ、外注費と給与の区分判断や工事原価の配分など、建設業特有の論点に的確に対応できます。(「現場の言葉が通じる税理士」は建設業経営者にとって非常に心強い存在です)
料金体系
| 年間売上 | 月額顧問料(記帳なし) | 月額顧問料(記帳あり) | 決算料(記帳なし) |
|---|---|---|---|
| 〜1,000万円 | 18,000円 | 23,000円 | 90,000円 |
| 〜3,000万円 | 23,000円 | 30,000円 | 115,000円 |
| 〜5,000万円 | 27,500円 | 37,000円 | 137,500円 |
| 〜1億円 | 35,000円 | 48,000円 | 175,000円 |
記帳代行の有無で料金が分かれているため、自社で記帳できる場合はコストを抑えられます。
匠税理士事務所

- 工事進行基準・工事完成基準など建設会計に精通
- 9割超の融資成功率を誇る資金調達支援
- 建設業許可申請の代行にも対応(行政書士連携)
東京・自由が丘の税理士事務所です。建設業の会計処理に精通し、キャッシュフロー改善や資金調達を得意としています。経営セミナー講師経験のある税理士が担当し、建設業許可申請も行政書士と連携して支援しています。
融資成功率9割超という実績は、建設業で資金繰りに悩む経営者にとって頼もしいポイントです。(建設業は入金サイクルが長いため、融資に強い税理士がいると経営の安定感が違います)
料金体系
| サービス | 料金 |
|---|---|
| 建設業許可 新規申請(知事・一般) | 報酬126,000円〜 + 法定費用90,000円 |
| 建設業許可 新規申請(大臣・一般) | 報酬147,000円〜 + 法定費用150,000円 |
| 顧問料・決算料 | 個別見積もり |
建設業許可の申請料金は明示されていますが、顧問料は個別見積もりとなります。
オスカー税理士法人(一人親方プロジェクト)

- 一人親方・個人事業主に特化した低価格プラン
- インボイス制度対策に対応
- 記帳代行から確定申告まで丸投げ可能(書類郵送のみでOK)
愛知県に拠点を置く税理士法人が運営する一人親方向け専門サービスです。年間売上1,000万円未満の建設業個人事業主を対象に、月額11,000円(税込)で記帳代行・確定申告まで一括対応しています。
書類を郵送するだけで記帳から申告まで丸投げできるため、現場で忙しい一人親方にとって使い勝手の良いサービスです。(年間合計18.7万円という料金は一人親方向けとしてはかなり良心的です)
料金体系
| 項目 | 月額(税込) | 年額(税込) |
|---|---|---|
| 顧問料 | 11,000円 | 132,000円 |
| 決算料 | — | 55,000円 |
| 年間合計 | — | 187,000円 |
年間売上1,000万円未満が対象です。記帳代行・確定申告込みで年間187,000円という明朗会計です。
後藤会計事務所

- 建設業・建築業に特化した記帳代行サービス
- インボイス制度対応の確定申告コースあり
- 建設組合・建築組合からの信頼が厚い
名古屋の建設業に強い会計事務所です。月額1,000円からの記帳代行や月額10,000円からの税務顧問など、低価格で建設業の経理をサポートしています。一人親方のインボイス対応にも注力しています。
記帳代行が月額1,000円〜という破格の料金設定は、経理に手が回らない小規模建設業者にとって非常に魅力的です。(建設組合経由での紹介も多く、業界内での信頼度が高い事務所です)
料金体系
| サービス | 料金(税抜) |
|---|---|
| 記帳代行(サポート・月50仕訳まで) | 1,000円/月 |
| 記帳代行(丸投げ・月50仕訳まで) | 3,000円/月 |
| 記帳代行(丸投げ・月100仕訳) | 10,000円/月 |
| 税務申告作成代行 | 30,000円 |
| 決算税務申告作成代行 | 50,000円 |
| 全業務代行(記帳・決算・申告) | 140,000円 |
| 税務顧問 | 10,000円〜/月 |
上記は税抜価格です。サービスを組み合わせて必要なものだけ選べる柔軟な料金体系が特徴です。
最後に
建設業は外注費の区分、工事原価の管理、建設業許可の維持、インボイス対応など、税務・経理の面で他の業種より手間がかかります。これらを経営者や一人親方が自力でこなすのは現実的ではなく、建設業の実務を理解している税理士に任せるのが合理的な選択です。
税理士を選ぶ際は、建設業の顧問実績があるか、経審対策に対応できるか、資金繰りの相談に乗ってもらえるかを確認してください。費用面では、一人親方なら月額1〜2万円、法人なら月額3〜5万円が目安です。建設業に強い税理士を見つけるには、複数の候補から見積もりを取り、対応範囲を比較するのが最も確実な方法です。
建設業に強い税理士を探している方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。業種や希望条件を伝えれば、建設業の実績がある税理士を無料で紹介してもらえます。











