作成日:2020.05.27  /  最終更新日:2020.05.25

個人事業主が知っておきたい確定申告のポイント

低所得の個人事業主も確定申告するの?

納税は国民の義務であり、すべての人は所定の税金を納める必要があります。しかし、起業して日が浅い個人事業主などの場合、すぐに利益が出ることはまれであり、納税行為自体が事業経営を圧迫する可能性もあります。

そこで、納税制度には様々な控除が用意されています。確定申告においても、課税所得が38万円以下であれば申告不要とされています。これは、課税所得から基礎控除分の38万円を差し引いた時に、残金が残らなければ課税されないためです。

逆に言えば、申告すべき納税額が納付となる場合には、確定申告が必要になります。例えば、給与所得者であっても、収入が2,000万円を超える場合、主たる給与支給先以外からの収入が20万円を超える場合、各種金融取引で利益がある場合などは確定申告が必要です。

確定申告をしない場合のデメリット

払いすぎた税金の還付が受けられません。特に自分に適用されるはずの控除枠がわからないため、不必要に多く税金を納めてしまう可能性があります。

次に、赤字の繰り越しができなくなります。スタートアップ時の設備投資などにより発生する赤字は、期限内に、かつ毎年度確定申告をしていれば3年間まで繰り越しが可能です。さらに、国民健康保険料の控除が受けられなくなります。

年末調整をしていない場合は、国民健康保険料の控除申請が可能になる場合があります。特に、年度内に退職した場合などに、再就職までの間に国民健康保険被保険者に該当し、国民健康保険料を支払った場合などには注意が必要です。

また、個人事業主であっても確定申告を怠っていると、税務調査の対象となる場合もあります。適切に納税されていないことが発覚した場合、追徴課税となり元々の本税額に加算税・延滞税が加算されて税額を納入することになります。

確定申告の流れ

確定申告の手続きは、次のような手順で進めます。

まず、確定申告用紙を入手します。最寄りの税務署で直接入手することや、郵送での送付依頼も可能です。国税庁のサイト上で作成する方法もあります。

次に、経費の領収書などの証明書類を揃えます。特に、生命保険の控除証明書、事故盗難などの場合の事故証明書なども集めます。

その後、書類をもとに申告書を作成します。作成が終わったら、申告書を税務署に提出します。提出先は住所により管轄が決められているので、事前に確認してから提出します。オンラインや郵送での提出も可能です。

オンラインは便利ですが、パソコンの設定や事前に購入しておく装置が必要な場合もあり、時間的な余裕を持って管轄の税務署に確認しておいたほうが無難です。慣れない場合は税務署の窓口に出向いて係員に確認したもらった上で提出するほうがよいでしょう。

申告書の受領後、一定の期間を経て税金の還付(または納付)が行われます。還付は登録済みの銀行口座宛に振り込まれます。

普段の書類管理も大切

確定申告の際には、控除申請がひとつのポイントになるのですが、その際には控除対象になる支出を証明する書類が重要な意味を持ちます。領収書やレシートを日頃から整理して保管しておくと、確定申告の際に慌てずにすみます。

ただ、日々の買い物の領収証やレシートを整理・保管しておくのは手間もかかり、保管場所の問題もでてきます。簡単にレシートをスキャンして自動的に分類・整理・管理するアプリが使えるデジタルスキャナーなども市販されていますので、日々の支出が多い方にはこのような便利なツールの活用も検討する価値があります。

もし領収書やレシートを紛失してしまっても、通院のための交通費などの領収証の代わりとしては、家計簿に明確な記載があれば認められることもあります。ですから、確定申告の際に必要な情報は、オリジナルの領収証の保管だけではなく、家計簿にも転記しておくことをお勧めします。

確定申告の手続は事前に準備をしておけば、自分でも十分に処理可能なものではありますが、申告書の提出時期と仕事の繁忙期が重なった場合などには、時間が取れないことも考えられます。

また、数字を扱う事務処理には得手不得手もあるので、どうしても煩雑さを感じてしまう場合もあります。そのようなときには、専門家の手を借りるというのも一法です。

確定申告の手続を税理士・会計士などにお願いし、空いた時間をより生産的な活動に充てるほうが全体として経済的と思われる場合は、迷わず専門家への依頼を検討すべきでしょう。

まとめ

個人事業主にとっては、確定申告についての正しい知識と漏れのない対処は、税金の払い過ぎを防ぎ、財務上のメリットを享受できます。申告手続き自体は、個人事業主自ら対応可能ではありますが、場合によっては専門家の手を借りるほうが経済合理性があるかもしれません。

執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。