作成日:2026.03.15  /  最終更新日:2026.03.16

確定申告は自分でできる?自力でやる手順と限界が来るライン

確定申告を自分でやりたいけれど、本当にできるのか不安という方は多いです。結論から言えば、確定申告は自分でできます。国税庁の確定申告書等作成コーナーを使えば、画面の指示に従って入力するだけで申告書が完成します。ただし、事業規模や取引内容が複雑になると、自力での対応に限界が出てきます。この記事では、確定申告を自分でやる具体的な手順と、税理士に頼んだ方がいいラインを解説します。

この記事の目次

確定申告は自分でできる(ただし事業規模による)

確定申告は税理士に頼まなくても自分でできます。実際、令和5年分の確定申告では約2,324万人が申告書を提出しており、その多くが自力で手続きを完了しています(出典 国税庁 令和5年分の確定申告状況等)。

特にフリーランスや副業の会社員であれば、クラウド会計ソフトと国税庁の確定申告書等作成コーナーを組み合わせることで、初めてでも申告書を作成できます。(ただし、初年度は仕組みの理解に時間がかかるため、丸一日は覚悟した方がいいです)

自分でやりやすいケース

以下に該当する方は、自分で確定申告を完了できる可能性が高いです。

  • フリーランス・個人事業主で、取引先が少ない(10社以下)
  • 副業の会社員で、副業の収入源が1〜2種類
  • 売上が年間500万円以下で、経費の種類が限られている
  • 不動産所得や株式の譲渡所得がない
  • 従業員を雇っていない

自分でやると苦労するケース

一方で、以下のような状況では自力での申告が難しくなります。

  • 年商が1,000万円を超えて消費税の申告が必要になった
  • 従業員を雇い始めた(源泉徴収・年末調整が発生)
  • 不動産の売買や相続が絡む
  • 複数の事業を運営している
  • 税務調査の連絡が来た

特に消費税の申告が加わると、処理すべき項目が一気に増えます。売上1,000万円を超えた翌々年から課税事業者になるため、このタイミングで税理士への依頼を検討する方が急増します。

確定申告が必要な人の条件を押さえる

そもそも自分が確定申告をしなければならないのかを確認しておきましょう。国税庁によると、その年分の所得金額の合計額が所得控除の合計額を超え、その超える額に対する税額が配当控除額等を超える人は確定申告が必要です(出典 国税庁 No.2020 確定申告)。

個人事業主は原則として毎年申告が必要

個人事業主(フリーランス含む)は、事業所得がある限り原則として毎年確定申告が必要です。赤字であっても青色申告をしている場合は損失の繰越控除(赤字を最大3年間繰り越して翌年以降の黒字と相殺できる制度)が使えるため、申告しておいた方が有利です。

なお、副業収入が「雑所得」に分類される場合でも、年間の所得が20万円を超えれば確定申告が必要です。ただし、住民税の申告は20万円以下でも必要になるため、「20万円以下なら何もしなくてよい」と思い込んでいると住民税の申告漏れになるケースがあります。この点は見落としている方が非常に多いです。

会社員でも確定申告が必要になるケース

給与所得者であっても、以下の条件に該当する場合は確定申告が必要です(出典 国税庁 No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)。

条件 具体的な内容
給与収入が2,000万円超 年末調整の対象外となるため、自分で申告が必要
副業所得が20万円超 給与以外の所得(副業、投資など)が年間20万円を超える場合
2か所以上から給与を受けている 主たる給与以外の収入と他の所得の合計が20万円超の場合
医療費控除や住宅ローン控除(初年度)を受ける 年末調整で対応できない控除を適用したい場合

確定申告を自分でやる全体の流れ

確定申告の手続きは、大きく分けて「準備」「書類作成」「提出」「納税」の4段階です。全体の流れを把握しておくと、どこで時間がかかるかが事前にわかります。

段階 やること 目安の時間
準備 必要書類の収集、帳簿の整理 数日〜2週間
書類作成 収支内訳書または青色申告決算書の作成、申告書への記入 半日〜1日
提出 e-Tax送信、郵送、または税務署へ持参 30分〜1時間
納税 振替納税、クレジットカード、QRコード決済など 15分程度

最も時間がかかるのは「準備」の段階です。日頃から帳簿をつけていない場合、1年分の領収書やレシートを整理するだけで数日かかります。確定申告を自分でやると決めたなら、日常的な記帳を習慣にすることが前提です。

自分で確定申告をやるための事前準備

申告書の作成に入る前に、必要な書類と環境を整えます。ここを怠ると、作成途中で手が止まることになります。

必要な書類を揃える

確定申告に必要な書類は、所得の種類によって異なります。個人事業主の場合は以下が基本です。

  • マイナンバーカード(またはマイナンバー通知カード + 本人確認書類)
  • 前年分の確定申告書の控え(あれば)
  • 売上がわかる資料(請求書、通帳の入金記録など)
  • 経費の領収書・レシート
  • 各種控除の証明書(生命保険料控除証明書、社会保険料の支払証明書など)
  • 銀行口座情報(還付金の振込先)

会社員で副業の確定申告をする場合は、上記に加えて源泉徴収票が必要です。勤務先から受け取った源泉徴収票は確定申告が終わるまで保管してください。

会計ソフトを導入しておく

手書きの帳簿やExcelでも申告はできますが、2026年時点ではクラウド会計ソフトを使う方が圧倒的に効率的です。代表的なサービスとしてはfreee、マネーフォワードクラウド確定申告、弥生のクラウド確定申告があります。

いずれも年額1〜2万円程度で利用でき、銀行口座やクレジットカードとの自動連携で仕訳の手間を大幅に減らせます。(正直、会計ソフトなしで青色申告の65万円控除を狙うのは、よほど簿記の知識がない限り現実的ではありません)

会計ソフトを選ぶ際のポイントは、操作のわかりやすさとサポート体制です。簿記の知識がない方はfreeeのように仕訳の概念を意識せずに入力できるタイプが向いています。一方、簿記の基礎知識がある方はマネーフォワードや弥生のように勘定科目ベースで入力するタイプの方が柔軟に使えます。いずれも無料体験期間があるため、実際に触ってから選ぶのがおすすめです。

事業用の銀行口座とクレジットカードを分けておく

確定申告を自分でやるなら、事業用とプライベート用の口座・カードは分けておくべきです。混在していると、1年分の明細からどれが事業用の支出かを仕分ける作業が発生し、膨大な時間がかかります。

事業専用の口座を1つ作り、売上の入金と経費の支払いをすべてその口座に集約するだけで、帳簿付けの負担は大幅に減ります。会計ソフトとの自動連携も、口座が分かれていれば取り込んだ明細をほぼそのまま仕訳に反映できます。

白色申告と青色申告、自分でやるならどちらを選ぶべきか

結論として、多少手間がかかっても青色申告を選ぶべきです。青色申告特別控除による節税メリットが大きく、会計ソフトを使えば白色申告との手間の差はほとんどありません。

青色申告なら最大65万円の控除が受けられる

青色申告の最大のメリットは、青色申告特別控除です。国税庁によると、正規の簿記(複式簿記)で記帳し、e-Taxで申告すれば最大65万円の所得控除を受けられます(出典 国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。

控除額 条件
65万円 複式簿記 + e-Tax申告(または電子帳簿保存)
55万円 複式簿記 + 紙で申告
10万円 簡易簿記(単式簿記)で記帳

例えば、所得税率20%の方が65万円の控除を受けると、所得税だけで約13万円、住民税と合わせると約20万円近く税負担が軽くなります。白色申告にはこの控除がないため、同じ売上でも手取り額に大きな差が出ます。

白色申告は帳簿付けの義務化で手軽さのメリットが薄れている

かつて白色申告は「帳簿をつけなくてよい」という手軽さがメリットでした。しかし、2014年(平成26年)からすべての白色申告者にも記帳・帳簿保存が義務化されています。つまり、帳簿をつける手間は白色でも青色でも同じです。

それならば、控除額が大きい青色申告を選ばない理由はほとんどありません。青色申告をするには事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要がありますが、開業届と一緒に出せば手続きは1回で済みます。

確定申告書の作成手順(e-Taxを使う場合)

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使えば、パソコンやスマートフォンから申告書を作成・提出できます。画面の案内に沿って金額を入力するだけで自動計算されるため、計算ミスの心配がありません(出典 国税庁 確定申告書等の作成)。

事前に用意するもの

  • マイナンバーカード(スマホまたはICカードリーダーで読み取り)
  • 会計ソフトで作成した青色申告決算書または収支内訳書のデータ
  • 源泉徴収票(会社員の場合)
  • 各種控除証明書

マイナポータルと連携すると、医療費や生命保険料の情報が自動で取り込まれるため、入力の手間がさらに減ります。

作成から提出までの流れ

e-Taxでの申告手順は以下の通りです。

  1. 国税庁の確定申告書等作成コーナーにアクセスする
  2. マイナンバーカードでログインする(スマホまたはICカードリーダーを使用)
  3. 申告書の種類を選択する(所得税の確定申告書)
  4. 収入・所得を入力する(事業所得、給与所得など)
  5. 所得控除を入力する(社会保険料控除、生命保険料控除、医療費控除など)
  6. 青色申告決算書または収支内訳書のデータを添付する
  7. 計算結果を確認し、送信する
  8. 送信後、受付完了の通知を保存する

初めてe-Taxを利用する場合は、利用者識別番号の取得やマイナンバーカードの設定に30分〜1時間ほどかかります。(2回目以降はログインしてすぐに作成に入れるため、申告書の作成自体は1〜2時間で終わります)

紙で提出する方法もあるが、e-Taxの方がメリットが大きい

確定申告書は税務署への持参や郵送でも提出できます。ただし、紙で提出すると青色申告特別控除が55万円に下がるため、65万円の控除を受けたいならe-Tax一択です。

提出方法ごとの比較

提出方法 メリット デメリット
e-Tax(パソコン・スマホ) 65万円控除が適用、24時間提出可能、還付が早い 初回設定にやや手間がかかる
郵送 税務署に行かなくてよい 控除が55万円に下がる、届くまで時間がかかる
税務署へ持参 その場で不備を指摘してもらえる 控除が55万円に下がる、確定申告時期は混雑する

令和5年分の確定申告では、ICTを利用した申告が全体の83.5%を占めています。e-Taxでの申告はすでに主流であり、操作に不安がある方でも、一度やってしまえば翌年からは格段に楽になります。

自分でやる場合によくあるミスと対策

確定申告を自分でやると、プロに任せていれば起きないミスが発生します。特に多い失敗パターンを知っておくことで、余計なトラブルを防げます。

経費の計上漏れで税金を多く払ってしまう

自分で申告する場合に最も多いのが、経費の計上漏れです。特に以下の経費は見落とされやすいです。

  • 自宅兼事務所の家賃・光熱費の按分(家事按分)
  • 通信費(スマホ代、インターネット回線費用の事業使用分)
  • 交通費(ICカードの利用履歴を経費にしていない)
  • 書籍・セミナー費用
  • 業務用のサブスクリプション費用

家事按分は「プライベートと事業で兼用しているもの」の事業使用割合を経費にする仕組みです。例えば、自宅の30%を仕事に使っている場合、家賃の30%を経費にできます。ただし、按分割合が適切かどうかの判断は税理士に確認するのが確実です

控除の適用忘れで還付金を受け取り損ねる

経費だけでなく、所得控除の適用漏れも多発します。特に、ふるさと納税の寄附金控除やiDeCoの小規模企業共済等掛金控除は、会社員でもワンストップ特例の対象外になった場合に確定申告が必要です。控除証明書が届いたら、申告まで必ず保管しておいてください。

よく見落とされる控除には、以下のようなものがあります。

  • 小規模企業共済等掛金控除(iDeCo、小規模企業共済の掛金)
  • 寄附金控除(ふるさと納税で6自治体以上に寄附した場合)
  • 雑損控除(災害や盗難で損害を受けた場合)
  • 医療費控除(年間10万円以上の医療費がある場合)

確定申告を自分でやって節約したつもりが、控除の見落としで数万円〜数十万円損しているケースは珍しくありません。「控除の適用漏れがないか不安」という方は、申告前に一度税理士に相談するだけでも大きな違いがあります。

申告期限を過ぎると延滞税・無申告加算税が発生する

所得税の確定申告期限は毎年3月15日です。この期限を過ぎて申告すると、延滞税(年利最大14.6%)と無申告加算税(原則15〜20%)が課される可能性があります。「あとでやろう」と後回しにして期限を過ぎるのは、自分で申告する場合の最大のリスクです。

期限後申告であっても、税務署から指摘を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税が5%に軽減される場合があります。期限を過ぎてしまった場合でも、できるだけ早く申告することが重要です。

自分でやる限界が来るラインは「年商1,000万円」と「消費税」

確定申告を自分で続けるかどうかの判断基準として、最もわかりやすいのが年商1,000万円のラインです。

年商1,000万円を超えると消費税の申告が加わる

年商(売上)が1,000万円を超えると、その翌々年から消費税の課税事業者になります。消費税の申告は所得税とは別に行う必要があり、仕入税額控除の計算や簡易課税制度の選択など、判断すべき項目が大幅に増えます。

消費税の申告を間違えると、本来納めなくてよかった税金を払うことになったり、逆に過少申告で追徴課税を受けるリスクがあります。消費税が絡み始めた段階で、税理士への相談を検討した方が安全です。

本業に支障が出始めたら税理士に頼むタイミング

年商だけでなく、以下のサインが出たら税理士への依頼を真剣に検討すべきです。

  • 帳簿付けに月3時間以上かかっている
  • 確定申告の時期に本業の売上が落ちる
  • 税務関連の判断で迷うことが増えた
  • 従業員を雇い始めた
  • 法人化を検討している

税理士への依頼費用は、個人事業主の場合で年間10〜30万円が目安です。確定申告だけのスポット依頼なら5〜15万円程度で済みます。(帳簿付けや税務判断に費やしている時間を時給換算すると、税理士に頼んだ方が安いケースは意外と多いです)

確定申告を自分でやる場合の年間スケジュール

確定申告は「2〜3月にまとめてやるもの」と考えがちですが、実際は1年を通じた準備が必要です。直前に慌てないためのスケジュールを把握しておいてください。

時期 やること
毎月 帳簿の記帳、領収書・レシートの整理と保管
10〜11月 各種控除証明書(生命保険、iDeCoなど)の受け取り・保管
12月 年末までの売上・経費の締め作業
1月 年間の帳簿を確定、決算書・収支内訳書の作成
2月16日〜3月15日 確定申告書の作成・提出・納税

最も重要なのは毎月の記帳です。これを怠ると、申告直前に1年分の取引を思い出しながら入力する羽目になり、経費の計上漏れや金額の間違いが起きやすくなります。会計ソフトの自動連携を活用して、毎月30分程度で記帳を終わらせる仕組みを作ることが、自分で確定申告を続けるための最大のコツです。

税理士に依頼する場合の費用感

自分でやるか税理士に頼むかを判断するには、依頼した場合の費用を知っておく必要があります。

依頼内容 費用の目安
確定申告のみ(白色申告) 5〜10万円
確定申告のみ(青色申告) 10〜20万円
顧問契約(月次顧問 + 確定申告) 月額1〜3万円 + 決算料
記帳代行を含む顧問契約 月額2〜4万円 + 決算料

確定申告だけのスポット依頼であれば、白色申告なら5万円前後から対応してもらえます。「税理士は高い」というイメージがある方も多いですが、年商500万円以下であれば月1万円台で顧問契約を結べる事務所は普通にあります。

費用を比較する際は、「自分でやる場合のコスト」も計算してみてください。帳簿付けに月3時間、確定申告の準備に2〜3日かかるとして、自分の時給で換算するといくらになるか。フリーランスであれば、その時間を本業に使えば売上が立つわけですから、税理士費用の方が安くつくケースは少なくありません。

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確定申告を税理士に依頼した場合の費用は確定申告を税理士に依頼する費用で詳しく解説しています。

そもそも個人事業主に税理士が必要かどうか迷っている方は個人事業主に税理士は必要か?も参考にしてください。

最後に

確定申告は自分でできます。国税庁の確定申告書等作成コーナーとクラウド会計ソフトを活用すれば、フリーランスや副業会社員の多くは自力で申告を完了できます。ただし、事業が成長して年商1,000万円を超えたり、消費税の申告が必要になったりすると、自力での対応には限界が出てきます。

自分で申告する時間と手間を本業に使った方が利益になるのであれば、税理士への依頼を検討するタイミングです。まずは費用感を確認して、自分でやるか頼むかを比較してみてください。

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執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。