個人事業主やフリーランスが確定申告をする際、青色申告と白色申告のどちらで申告するかを選ぶ必要があります。結論として、事業所得がある方は青色申告を選ぶべきです。白色申告は手軽に見えますが、2014年以降は白色申告でも記帳義務があるため、手間の差は縮まっています。一方、青色申告には最大65万円の特別控除をはじめとした税制上の優遇措置があり、選ばない理由がほとんどありません。この記事では、両者の違いを具体的に比較し、自分に合った申告方法の選び方を整理します。
この記事の目次
青色申告は税制優遇を受けられる申告方法、白色申告は届出不要の申告方法
確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2つの方法があります。青色申告は、事前に税務署へ届出を行い、一定の帳簿を備え付けることで、各種の税制優遇を受けられる制度です。白色申告は、届出なしで行える申告方法ですが、優遇措置はありません。
ここで重要なのは、白色申告が「簡単でラク」という認識はすでに過去のものだということです。平成26年(2014年)1月から、白色申告者にも記帳と帳簿書類の保存が義務付けられました(出典 国税庁 No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度)。つまり、「記帳が面倒だから白色にする」という選択は、もはや合理的ではありません。
青色申告と白色申告の主な違いは5つ
両者の違いを一覧で整理します。
| 項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前届出 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
| 特別控除 | 最大65万円 | なし |
| 記帳方法 | 複式簿記(65万円・55万円控除の場合) | 簡易な方法でOK |
| 赤字の繰越し | 3年間繰越可能 | 不可 |
| 家族への給与 | 届出額の範囲で全額経費にできる | 配偶者86万円、その他50万円まで |
それぞれの違いを詳しく見ていきます。
青色申告特別控除は最大65万円で3段階ある
青色申告の最大のメリットは、特別控除です。所得金額から最大65万円を差し引けるため、その分だけ課税対象の所得が減ります。控除額は記帳方法や申告手段によって3段階に分かれています(出典 国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。
| 控除額 | 要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付。さらにe-Taxで電子申告するか、電子帳簿保存を行う |
| 55万円 | 複式簿記で記帳し、貸借対照表・損益計算書を添付(紙で提出) |
| 10万円 | 簡易簿記で記帳(複式簿記の要件を満たさない場合) |
65万円控除を受けるにはe-Taxか電子帳簿保存が必須
令和2年分(2020年分)の確定申告から、65万円の控除を受けるには、55万円控除の要件に加えて、e-Tax(国税電子申告・納税システム)で確定申告書を提出するか、電子帳簿保存を行うことが必要です。紙で申告書を提出した場合、控除額は55万円になります。
実務的には、e-Taxで申告するのが最も手軽です。マイナンバーカードとICカードリーダー(またはスマートフォン)があれば電子申告できます。(クラウド会計ソフトを使っていれば、電子申告の手続きはほぼ自動化されています)
白色申告にはこの控除が一切ない
白色申告には特別控除の制度がありません。同じ売上・経費であれば、青色申告の方が課税所得が最大65万円少なくなります。仮に所得税率が20%の方であれば、青色申告特別控除だけで所得税と住民税を合わせて年間約20万円の差が出ます。(この差額を考えると、青色申告の手間は十分に元が取れます)
赤字の繰越しは青色申告だけの特権
青色申告では、事業で赤字(純損失)が出た場合、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越し、黒字の所得から差し引くことができます(出典 国税庁 No.2070 青色申告制度)。
開業初年度に赤字が出やすいフリーランスほど恩恵が大きい
開業したばかりの時期は、設備投資や準備費用がかさみ、赤字になるケースが少なくありません。青色申告であれば、この赤字を翌年以降の黒字と相殺できます。
たとえば、開業1年目に100万円の赤字が出て、2年目に300万円の黒字が出た場合、2年目の課税所得は200万円として計算されます。白色申告ではこの繰越しができないため、2年目は300万円がそのまま課税対象です。
前年の税金が戻ってくる「繰戻還付」も使える
青色申告には、赤字を翌年に繰り越すだけでなく、前年に納めた所得税の還付を受けられる「純損失の繰戻還付」という制度もあります。前年も青色申告をしていた場合に限り、赤字を前年の黒字と相殺して、前年分の所得税の一部または全部を還付請求できます。白色申告にはこの制度はありません。
家族への給与の取り扱いが大きく異なる
事業を手伝っている家族(事業専従者)への給与の扱いも、青色と白色で大きな差があります。
青色申告なら届出額の範囲で全額を経費にできる
青色申告者は、「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出することで、届出に記載した金額の範囲内で家族への給与を全額必要経費に算入できます(出典 国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除)。届出書の提出期限は、その年の3月15日まで(1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内)です。
ただし、届出を出せばいくらでも認められるわけではなく、労務の対価として相当であると認められる金額に限られます。
白色申告は配偶者86万円、その他の親族は50万円が上限
白色申告の場合、事業専従者控除として差し引ける金額には上限があります。配偶者は最大86万円、それ以外の親族は1人あたり最大50万円です。青色申告のように実際に支払った給与の全額を経費にすることはできません。
家族と一緒に事業を運営しているケースでは、この差はかなり大きくなります。(たとえば配偶者に月20万円の給与を支払っている場合、青色なら年間240万円を経費にできますが、白色では86万円までしか認められません)
記帳の手間は「ほぼ同じ」が現実
青色申告と白色申告の記帳方法には違いがあります。しかし、実際の手間という観点では差はほとんどなくなっています。
白色申告でも記帳と帳簿保存は義務
前述のとおり、白色申告者にも記帳義務と帳簿書類の保存義務があります。帳簿の保存期間は原則7年間、書類は5年間です(出典 国税庁 個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について)。白色申告では「簡易な方法」による記帳が認められていますが、収入と経費を項目ごとに記録する作業自体は必要です。
クラウド会計ソフトを使えば複式簿記も手間は変わらない
青色申告の65万円・55万円控除を受けるには複式簿記が必要ですが、freeeやマネーフォワード、弥生会計などのクラウド会計ソフトを使えば、取引を入力するだけで自動的に複式簿記の帳簿が作成されます。銀行口座やクレジットカードと連携すれば、日々の入力作業はさらに減ります。
「白色申告は簡単、青色申告は面倒」というイメージは、手書きの帳簿が前提だった時代の話です。2026年現在、会計ソフトを使う前提であれば、記帳の手間に実質的な差はありません。
青色申告を始めるには承認申請書の提出が必要
青色申告で確定申告をするには、事前に税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出する必要があります(出典 国税庁 A1-8 所得税の青色申告承認申請手続)。
提出期限は原則3月15日まで
青色申告承認申請書の提出期限は以下のとおりです。
| ケース | 提出期限 |
|---|---|
| すでに事業を行っている場合 | 青色申告をしようとする年の3月15日まで |
| 1月16日以降に新規開業した場合 | 事業開始日から2か月以内 |
| 相続により事業を承継した場合 | 死亡日の時期により異なる(1〜8月死亡は4か月以内) |
期限を過ぎると、その年は白色申告になります。翌年から青色申告にしたい場合は、翌年の3月15日までに申請書を出す必要があります。(申請書の提出を忘れていて後悔する方が毎年一定数います。開業届と一緒に出すのがベストです)
届出は税務署への書類提出またはe-Taxで完了する
申請書は国税庁のWebサイトからダウンロードできます。記入する内容は、氏名・住所・事業の種類・簿記方式などで、特に複雑な項目はありません。税務署の窓口に持参するか、郵送するか、e-Taxで提出することも可能です。
白色申告を選ぶべきケースはごく限られる
基本的には青色申告を選ぶべきですが、白色申告が選択肢になるケースもゼロではありません。
事業所得がなく雑所得だけの場合は白色申告になる
青色申告ができるのは、事業所得・不動産所得・山林所得がある方です。副業の収入が「雑所得」として扱われる場合は、そもそも青色申告の対象外です。会社員が副業で得た収入が年間数十万円程度で、継続性や事業性が認められない場合は雑所得に該当する可能性が高く、白色申告で申告することになります。
申請期限を過ぎてしまった場合は翌年からの切替えを検討する
青色申告承認申請書の提出期限を過ぎてしまった場合、その年は自動的に白色申告になります。この場合は、翌年分の申請書を早めに提出しておきましょう。
青色申告と白色申告のどちらが自分に合っているか判断に迷う場合は、税理士に相談してみるのが確実です。申告方法の選択だけでなく、帳簿の付け方や会計ソフトの選び方まで、まとめてアドバイスをもらえます。
青色申告と白色申告の選び方を状況別に整理する
ここまでの内容を踏まえ、どちらを選ぶべきかを状況別に整理します。
| あなたの状況 | 推奨する申告方法 | 理由 |
|---|---|---|
| 個人事業主・フリーランスとして開業済み | 青色申告 | 特別控除・赤字の繰越しなど、メリットが圧倒的に大きい |
| 副業収入が雑所得に該当する | 白色申告 | 青色申告の対象外 |
| 今年の申請期限を過ぎてしまった | 今年は白色、翌年から青色 | 今年分は白色で申告し、翌年の3月15日までに青色の申請書を提出 |
| 家族に給与を支払っている | 青色申告 | 白色の事業専従者控除より大幅に有利 |
| 赤字が見込まれる年がある | 青色申告 | 赤字の3年繰越し・繰戻還付が使える |
青色申告で見落としがちな注意点
青色申告を選んだ場合に、実務上注意しておくべきポイントがあります。
期限後申告をすると65万円控除が使えなくなる
青色申告特別控除の65万円(または55万円)を受けるには、確定申告書を申告期限内に提出する必要があります。期限を過ぎて申告した場合、控除額は10万円に減額されます。(「青色申告をしているから大丈夫」ではなく、申告期限を守ることがセットです)
帳簿に不備があると青色申告を取り消されるリスクがある
税務調査で帳簿の記帳が著しく不十分と判断された場合、青色申告の承認が取り消されることがあります。取り消されると、取消し後1年間は再申請ができません。帳簿は正確に記帳し、領収書や請求書などの証拠書類もきちんと保管しておくことが重要です。
青色申告でも確定申告を税理士に依頼するケースは多い
青色申告は会計ソフトを使えば自分でも対応できますが、事業の規模が大きくなると判断に迷う場面が増えます。年商が500万円を超えたあたりから、税理士に確定申告を依頼するケースが増えてきます。費用は青色申告の場合で10〜20万円程度が相場です。
最後に
青色申告と白色申告の最大の違いは、税制上の優遇措置があるかどうかです。青色申告には最大65万円の特別控除、赤字の3年繰越し、家族への給与の全額経費算入など、白色申告にはないメリットがあります。一方、白色申告でも記帳義務がある以上、手間の差はほとんどありません。事業所得がある方は、青色申告を選ぶのが合理的な判断です。
これから開業する方は、開業届と一緒に青色申告承認申請書を提出しておきましょう。すでに白色申告で確定申告をしている方も、翌年の3月15日までに申請すれば切り替えられます。
申告方法の選択や帳簿の付け方に不安がある方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。希望条件に合った税理士を無料で紹介してもらえます。










