e-Taxを使えば、税務署に行かずに自宅から確定申告ができます。令和6年分の確定申告では、申告者全体の74.0%がe-Taxを利用しており、今や確定申告の主流はオンライン申告です(出典 国税庁 令和6年分の確定申告状況等について)。この記事では、e-Taxを初めて使う方に向けて、事前準備から申告完了までの手順を具体的に解説します。
この記事の目次
e-Taxは自宅から確定申告できる国税庁の電子申告システム
e-Tax(イータックス)は、国税庁が運営する電子申告・納税システムです。所得税の確定申告だけでなく、消費税や贈与税の申告、各種届出書の提出もオンラインで完結します。
e-Taxを使う最大のメリットは、税務署に出向く必要がないことです。確定申告期間中の税務署は混雑がひどく、2〜3時間待ちになることも珍しくありません。e-Taxなら自宅のパソコンやスマホから24時間いつでも申告できます。(確定申告期間中は土日も含めて利用可能です)
さらに、青色申告をしている方にとっては大きなメリットがあります。65万円の青色申告特別控除を受けるには、e-Taxによる電子申告が要件のひとつです。e-Taxを使わずに紙で提出すると、控除額は最大55万円に下がります(出典 国税庁 No.2072 青色申告特別控除)。
e-Taxの申告方法は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」の2つ
e-Taxで確定申告を行う方法は大きく分けて2つあります。
| 方式 | 必要なもの | 特徴 |
|---|---|---|
| マイナンバーカード方式 | マイナンバーカード、スマホまたはICカードリーダー | 国税庁が推奨する標準的な方式。マイナポータル連携で自動入力も可能 |
| ID・パスワード方式 | 利用者識別番号と暗証番号(税務署で発行) | マイナンバーカードがない場合の暫定的な方式 |
国税庁はマイナンバーカード方式を推奨しています。ID・パスワード方式はマイナンバーカードが普及するまでの暫定措置という位置づけです。これから初めてe-Taxを使うなら、マイナンバーカード方式を選ぶのが基本です。
マイナンバーカード方式が標準で、今後もこちらが主流
マイナンバーカード方式では、カードに格納された電子証明書を使って本人確認を行います。必要なパスワードは次の2種類です。
- 利用者証明用電子証明書のパスワード(数字4桁)…ログイン時に使用
- 署名用電子証明書のパスワード(英数字6〜16桁)…申告データの送信時に使用
いずれもマイナンバーカードを受け取ったときに自分で設定したものです。忘れてしまった場合は、住所地の市区町村窓口でパスワードの初期化・再設定ができます。(ただし窓口に本人が出向く必要があるため、早めに確認しておくことを強くおすすめします)
ID・パスワード方式はマイナンバーカードがない場合の代替手段
マイナンバーカードを持っていない方は、税務署で「ID・パスワード方式の届出完了通知」を発行してもらうことで利用できます。窓口で本人確認書類を提示すれば即日発行されます。ただし、マイナポータルとの連携ができないため、医療費や保険料の自動入力機能が使えず、手入力の手間がかかります。
初めてのe-Taxで必要な事前準備は4つ
e-Taxを初めて使う場合、いきなり申告画面に進むのではなく、事前準備を済ませておくことが重要です。準備不足のまま始めると、途中で手が止まります。
マイナンバーカードを取得する
まだマイナンバーカードを持っていない方は、交付申請が必要です。申請から受け取りまで通常1か月程度かかるため、確定申告期間の直前に動き出すと間に合わない可能性があります。申請はスマホやパソコンからオンラインで可能です。受け取り時にパスワードを設定するので、忘れないようにメモしておいてください。
パソコンまたはスマホの環境を整える
e-Taxはパソコンとスマホのどちらでも利用可能です。ただし、利用環境によって使い方が異なります。
| 端末 | マイナンバーカードの読み取り方 | 向いている人 |
|---|---|---|
| パソコン | ICカードリーダーまたはスマホをカードリーダー代わりに使う | 事業所得がある方、入力項目が多い方 |
| スマホ | スマホ本体のNFC機能で読み取り | 給与所得のみの方、医療費控除やふるさと納税の還付申告をする方 |
パソコンを使う場合、以前はICカードリーダーが必須でした。現在は「2次元バーコード認証」に対応しており、パソコン画面に表示されるバーコードをスマホで読み取る方式でマイナンバーカードを認証できます。ICカードリーダーを別途購入する必要はありません。
マイナポータルと連携して自動入力を活用する
マイナポータルとe-Taxを連携させると、以下の情報が自動入力されます。
- 医療費の情報(健康保険組合から提供されるデータ)
- ふるさと納税の寄附金控除情報
- 生命保険料・地震保険料控除の証明書データ
- 住宅ローン控除の年末残高情報
- 公的年金等の源泉徴収票情報
令和6年分の確定申告では、マイナポータル連携の利用者は310万人に達し、前年から62.4%増加しました(出典 国税庁 令和6年分の確定申告状況等について)。手入力の手間が大幅に減るため、連携しておくのがおすすめです。
申告に必要な書類を手元に揃えておく
e-Taxで入力する際に必要な書類は、紙の確定申告と同じです。画面に沿って金額を入力していくため、手元に書類がないと先に進めません。
- 源泉徴収票(給与所得がある場合)
- 収入や経費がわかる帳簿・領収書(事業所得がある場合)
- 医療費の領収書やデータ(医療費控除を受ける場合)
- 寄附金受領証明書(ふるさと納税をした場合)
- 各種控除証明書(生命保険料、地震保険料、社会保険料など)
- マイナンバーカード
マイナポータル連携を使えば、上記の多くはデータで自動取得できます。ただし、事業所得の収支内訳書や青色申告決算書の作成に必要な帳簿類は、自分で準備する必要があります。
確定申告書等作成コーナーからe-Taxで申告する手順
実際のe-Tax申告は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を使うのが最もシンプルです。画面の案内に沿って金額を入力するだけで申告書が作成でき、そのままe-Taxで送信できます(出典 国税庁 確定申告書等の作成)。
確定申告書等作成コーナーにアクセスしてログインする
国税庁のホームページから「確定申告書等作成コーナー」にアクセスします。「作成開始」を選択し、提出方法で「e-Tax(マイナンバーカード方式)」を選びます。
パソコンの場合は、画面に表示される2次元バーコードをスマホのマイナポータルアプリで読み取ります。スマホの場合は、マイナポータルアプリが起動し、マイナンバーカードをスマホにかざしてログインします。
初めてe-Taxを利用する場合は、ログイン後に利用者情報の登録画面が表示されます。氏名・住所・生年月日などを入力すると、利用者識別番号が自動的に発行されます。(この番号は次回以降も使いますが、マイナンバーカード方式なら番号を覚えていなくてもログインできます)
申告書の種類を選択して収入・所得を入力する
ログイン後、作成する申告書の種類を選びます。
| 申告の種類 | 対象者 |
|---|---|
| 所得税 | 給与所得者の還付申告、個人事業主の確定申告など |
| 消費税 | 課税事業者で消費税の申告が必要な方 |
| 贈与税 | 年間110万円を超える贈与を受けた方 |
所得税の申告を選ぶと、収入の種類を選択する画面に進みます。給与所得、事業所得、不動産所得など、該当する所得の種類にチェックを入れて、源泉徴収票や帳簿を見ながら金額を入力します。
マイナポータル連携を設定済みの場合、給与の源泉徴収票データや保険料控除のデータは自動で反映されます。入力の手間が大幅に省けるため、連携設定は事前に済ませておくのが賢明です。
控除の入力と申告書の確認を行う
収入の入力が終わると、各種控除の入力画面に移ります。医療費控除、社会保険料控除、生命保険料控除、ふるさと納税の寄附金控除など、該当するものを入力します。
すべての入力が完了すると、申告書のプレビュー画面が表示されます。ここで入力内容に誤りがないか確認してください。特に、所得金額と控除額は間違いやすいため、源泉徴収票や帳簿と突き合わせて確認することが重要です。
電子署名を付与してデータを送信する
内容の確認が終わったら、マイナンバーカードで電子署名を行い、データを送信します。署名用電子証明書のパスワード(英数字6〜16桁)の入力が必要です。
送信が完了すると、受付番号と受付日時が記載された「送信結果」が表示されます。必ず保存またはスクリーンショットで記録しておいてください。送信後、e-Taxのメッセージボックスに届く「受信通知」は、確定申告書の控えの代わりに使えるため大切に保管してください。
スマホだけでe-Tax申告を完結させる方法
令和6年分の確定申告では、自宅からスマホでe-Tax申告した方は408万人で、前年比29.0%増加しています(出典 国税庁 令和6年分の確定申告状況等について)。スマホだけで申告が完結するため、パソコンを持っていない方でもe-Taxを利用できます。
スマホ申告はシンプルな申告内容に向いている
スマホでのe-Tax申告は、以下のような比較的シンプルな申告に向いています。
- 給与所得者の医療費控除やふるさと納税の還付申告
- 副業収入(雑所得)がある給与所得者の申告
- 年金受給者の申告
一方、事業所得がある個人事業主で、青色申告決算書を作成する必要がある場合は、パソコンの方が入力しやすいです。項目数が多く、スマホの小さな画面では操作しづらいためです。(できないわけではありませんが、相当な根気が要ります)
スマホでの操作手順はパソコンと基本的に同じ
スマホでの操作手順は、パソコン版と基本的に同じ流れです。確定申告書等作成コーナーにスマホのブラウザからアクセスし、NFC対応のスマホでマイナンバーカードを直接かざしてログインします。画面はスマホに最適化されており、途中でデータを保存することもできます。
e-Taxで初めての人がつまずきやすいポイント5つ
e-Taxの操作自体は画面の案内に従えば難しくありません。ただし、初めての方が高確率でつまずくポイントがあります。事前に知っておくだけで、スムーズに進められます。
マイナンバーカードのパスワードを忘れてログインできない
最も多いトラブルが、マイナンバーカードのパスワード忘れです。利用者証明用パスワード(数字4桁)は3回、署名用パスワード(英数字6〜16桁)は5回連続で間違えるとロックされます。
ロックされた場合は、住所地の市区町村窓口で解除手続きが必要です。確定申告の締め切り直前にこの事態に陥ると、窓口も混雑しており解除に時間がかかることがあります。申告期間に入る前に、パスワードが正しいか一度確認しておくことを強くおすすめします。
スマホでマイナンバーカードがうまく読み取れない
スマホのNFC機能でマイナンバーカードを読み取る際、かざす位置がずれると読み取りに失敗します。機種によってNFCアンテナの位置が異なるため、カードをスマホの背面にぴったり当てて数秒間動かさずに待つのがコツです。厚いケースや金属製ケースはNFCの電波を遮断するため、外してから読み取ってください。
途中で画面が固まる・エラーが出る
確定申告期間中はアクセスが集中するため、画面が固まったりエラーが発生したりすることがあります。特に期限間際の3月上旬〜中旬は混雑します。対策としては、早めに申告を済ませることが一番です。深夜や早朝の時間帯はアクセスが比較的少なく、快適に操作できます。
入力途中のデータが消えてしまう
ブラウザを閉じたりセッションがタイムアウトしたりすると、入力途中のデータが失われます。確定申告書等作成コーナーには「入力データの一時保存」機能があるため、こまめに保存しながら進めてください。
一時保存したデータは「.data」ファイルとしてダウンロードされます。次回は「作成再開」から保存ファイルを読み込むことで、続きから入力できます。
事業所得の入力で青色申告決算書の作成に手間取る
個人事業主が事業所得を申告する場合、青色申告決算書(または収支内訳書)の作成が必要です。売上・仕入・経費を科目ごとに入力する必要があり、帳簿が整理されていないと作業が止まります。
クラウド会計ソフトで帳簿を付けている場合はそのデータをもとに入力できますが、帳簿をまったく付けていない場合は1年分の領収書・通帳を見ながら集計する作業が発生します。(正直、初めての方がゼロから帳簿を作るのは丸一日以上かかります)
e-Taxで確定申告する際の注意点
申告期限は毎年3月15日が原則
所得税の確定申告期限は、原則として翌年の2月16日から3月15日です。e-Taxでもこの期限は同じです。ただし、e-Taxの場合は期間中24時間送信可能なので、3月15日の23時59分までに送信が完了すれば間に合います。
なお、還付申告(税金が戻ってくる申告)の場合は、確定申告期間に関係なく、翌年1月1日から5年間提出可能です。医療費控除やふるさと納税の還付申告は、混雑する2〜3月を避けて1月中に提出するのも一つの手です。
送信後に間違いに気づいたら「訂正申告」ができる
e-Taxで送信した後に入力ミスに気づいた場合、確定申告期限内であれば再度正しい申告書を送信することで訂正できます。後から送信した申告書が有効な申告として扱われます。
確定申告期限を過ぎてから間違いに気づいた場合は、「更正の請求」(税額が多すぎた場合)または「修正申告」(税額が少なすぎた場合)の手続きが必要になります。
e-Taxで提出しても添付書類の提出が必要なケースがある
e-Taxで確定申告書を提出すると、源泉徴収票や保険料控除証明書などの添付書類は提出を省略できます。ただし、税務署から後日確認を求められた場合に備えて、書類は5年間保存しておく必要があります。一部の特殊な申告では電子データで送信できず別途郵送が必要な場合がありますが、該当するかどうかは入力時に画面上で案内されます。
e-Taxと会計ソフトを連携すると申告がさらに楽になる
個人事業主やフリーランスの方は、クラウド会計ソフトとe-Taxを連携させることで、申告作業を大幅に効率化できます。
会計ソフトから直接e-Tax送信できる
freee、マネーフォワードクラウド、弥生オンラインなどの主要なクラウド会計ソフトは、ソフト上で作成した確定申告書をそのままe-Taxで送信する機能を備えています。確定申告書等作成コーナーに改めて金額を入力し直す必要がありません。
日常の記帳から申告書の作成・送信まで一気通貫で完結するため、転記ミスのリスクも減ります。
帳簿を普段から付けておくことが最大の時短
e-Taxの操作自体は、慣れてしまえばそこまで難しくありません。時間がかかるのは、申告に必要な帳簿や書類の準備です。確定申告の時期にまとめて1年分の経費を整理しようとすると、膨大な作業量になります。
クラウド会計ソフトを使って毎月の取引を入力しておけば、確定申告の時期にはほぼ自動で申告書が出来上がります。年に一度の苦行にしないためには、日々の記帳が最大の近道です。
帳簿の付け方がわからない、確定申告の作業に不安がある場合は、税理士に相談するのも選択肢です。特に開業初年度は、一度税理士に見てもらうことで正しい記帳方法が身につき、翌年以降は自分でできるようになるケースも多いです。
e-Taxで申告した後の納税・還付の流れ
納税が必要な場合は複数の支払い方法がある
確定申告の結果、税金を納める必要がある場合、e-Taxから申告するとそのまま電子納税の手続きに進めます。主な納税方法は以下のとおりです。
| 納税方法 | 手数料 | 特徴 |
|---|---|---|
| ダイレクト納付(口座引き落とし) | 無料 | 事前に届出が必要。即時または期日指定で納付可能 |
| インターネットバンキング | 無料 | 金融機関のネットバンキングから納付 |
| クレジットカード | 有料(税額に応じた手数料) | 「国税クレジットカードお支払サイト」から手続き |
| スマホアプリ納付 | 無料 | PayPay、d払い、au PAYなどで30万円以下の納付が可能 |
| コンビニ納付 | 無料 | QRコードを発行してコンビニで納付。30万円以下が対象 |
| 振替納税 | 無料 | 預貯金口座からの自動引き落とし。申告期限の約1か月後に引き落とし |
手数料がかからない方法がほとんどです。クレジットカード納付のみ手数料がかかるため、ポイント還元率と比較して判断してください。振替納税は引き落とし日が約1か月後になるため、資金繰りに余裕を持ちたい方に向いています。
還付金がある場合は通常1〜2か月で振り込まれる
医療費控除やふるさと納税の還付申告など、税金が戻ってくる場合は、e-Taxで申告すると書面提出よりも早く還付されます。e-Taxの場合、おおむね2〜3週間で指定口座に振り込まれます。書面提出の場合は1か月〜1か月半程度かかるため、還付金を早く受け取りたいならe-Taxが有利です。
自分でe-Taxを使うか税理士に依頼するかの判断基準
e-Taxの操作自体はそこまで難しくないものの、確定申告の内容が複雑な場合は、無理に自分でやらずに税理士に依頼する方が合理的です。
給与所得のみ・シンプルな申告なら自分でやるのが合理的
以下に該当する方は、e-Taxを使って自分で申告するのが効率的です。
- 給与所得のみで、医療費控除やふるさと納税の還付申告をしたい方
- 副業収入(雑所得)が年間20万円を超える給与所得者
- 年金受給者で確定申告が必要な方
これらのケースでは、確定申告書等作成コーナーの画面に沿って入力するだけで申告書が完成します。税理士に依頼する費用(5〜10万円程度)と比較すると、自分でやった方が明らかに経済的です。
事業所得がある方・初めての青色申告は税理士を検討すべき
個人事業主で事業所得がある方、特に初めて青色申告をする方は、税理士への依頼を検討する価値があります。複式簿記の帳簿作成や経費の判断など、専門知識がないと正確に処理するのが難しい領域です。初年度だけ税理士に依頼して正しいやり方を教わり、翌年から自分で申告する方法も現実的です。
最後に
e-Taxでの確定申告は、事前準備さえ済ませてしまえば、画面の案内に従って入力・送信するだけで完了します。マイナンバーカードの取得とパスワードの確認、マイナポータル連携の設定、必要書類の準備。この4つを申告期間前に済ませておくだけで、当日の作業は格段にスムーズになります。
青色申告の65万円控除を受けるためにもe-Taxは必須です。まだ紙で申告している方は、これを機に切り替えを検討してみてください。
確定申告の内容が複雑で自分での申告に不安がある方や、帳簿の作成から相談したい方は、税理士ドットコムの無料紹介サービスを活用してみてください。希望条件に合った税理士を無料で紹介してもらえます。










