作成日:2026.02.02  /  最終更新日:2026.03.16

相続税申告を税理士に依頼する費用の相場と報酬の決まり方

相続税申告を税理士に依頼する費用は、遺産総額の0.5〜1.0%が相場です。遺産総額5,000万円なら25〜50万円、1億円なら50〜100万円が目安になります。この記事では、相続税申告の税理士費用の相場と、報酬がどのように決まるのかを具体的に解説します。

この記事の目次

相続税申告の税理士費用は遺産総額の0.5〜1.0%が相場

多くの税理士事務所が「遺産総額の0.5〜1.0%」を基本報酬として設定しています。

遺産総額 税理士報酬の目安
5,000万円以下 20〜40万円
5,000万〜7,000万円 30〜55万円
7,000万〜1億円 40〜80万円
1億〜2億円 60〜120万円
2億〜3億円 100〜180万円
3億円超 150万円〜

この金額はあくまで基本報酬です。実際には土地の評価、相続人の人数、申告期限までの残り期間などによって加算されるため、最終的な請求額は基本報酬の1.3〜2倍になることも珍しくありません。(見積もり時に「基本報酬」と「追加報酬」の内訳を確認しないと、後から想定外の請求が来るケースがあります)

遺産総額5,000万円以下なら20〜40万円で依頼できる

遺産の大部分が自宅と預貯金のみという標準的なケースであれば、20〜40万円程度で依頼できます。国税庁の発表によると、令和5年分の相続税の課税割合は9.9%と過去最高を記録しており、被相続人数(死亡者数)1,576,016人のうち155,740人が申告対象です(出典 国税庁 令和5年分 相続税の申告事績の概要)。約10人に1人が相続税の申告対象となっている現在、相続税申告は決して特別なことではありません。

土地が1〜2筆、相続人が2〜3人程度のシンプルなケースであれば、税理士の作業量もそこまで多くないため、費用を抑えやすいです。

遺産総額1億円を超えると費用は60万円以上になる

遺産総額が1億円を超えると、財産の種類が増え、評価の難易度が上がるため、報酬も高くなります。特に、複数の不動産や非上場株式が含まれるケースでは、評価作業に時間がかかるため、80〜120万円程度の報酬になることが多いです。

ただし、遺産額が大きいほど税理士費用も高くなる一方で、適切な特例の適用や土地の評価減によって節税できる金額も大きくなります。遺産総額が1億円の場合、小規模宅地等の特例が適用できるかどうかだけで数百万円の差が出ることもあるため、費用だけで税理士への依頼を躊躇するのは得策ではありません。

税理士報酬は5つの要素で決まる

相続税申告の税理士報酬は、単に遺産総額だけで決まるわけではありません。以下の5つの要素が報酬額に影響します。

遺産総額が報酬の基本ベースになる

ほとんどの税理士事務所が遺産総額をベースに基本報酬を算出しています。ただし、遺産総額が同じでも「預貯金1億円だけ」というケースと「不動産5筆に非上場株式と生命保険が絡む1億円」では、税理士の作業量はまったく違います。遺産総額だけで報酬を比較するのは危険です。

土地の評価が多いと加算される

相続税申告で最も手間がかかるのが土地の評価です。土地は「路線価方式」または「倍率方式」で評価しますが、形状が不整形だったり、接道条件が複雑だったり、複数の用途にまたがっていたりすると、評価額の算定に相当な専門知識と時間が必要になります。

多くの税理士事務所では、土地1筆あたり5〜10万円の加算報酬を設定しています。土地が3筆あれば15〜30万円の追加です。(自宅の敷地1筆だけなら加算されないケースもありますが、賃貸用地や農地が含まれると確実に加算対象になります)

相続人の人数が多いと費用が上がる

相続人が増えると、遺産分割協議の内容を反映した申告書を相続人ごとに作成する必要があります。相続人1人あたり10〜20%の加算を設定している事務所もあります。特に、相続人同士で遺産分割の意見が割れている場合は、税理士が複数のシミュレーションを作成することになり、その分の費用が上乗せされます。

申告期限が迫っていると割増になる

相続税の申告期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内です(出典 国税庁 相続税がかかる場合)。この期限まで3ヶ月を切ってから依頼すると、多くの事務所で20〜50%程度の割増料金が発生します。

申告期限まで1ヶ月を切ると、引き受けてくれる税理士を見つけること自体が難しくなります。四十九日が過ぎたあたりで税理士探しを始めるのが理想的です。(10ヶ月は長いようで、遺産分割協議が長引くとあっという間に過ぎます)

特例の適用や税務調査対応で追加費用が発生する

小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、特例の適用にも追加費用がかかる事務所があります。また、申告後に税務調査が入った場合の立会い費用は、基本報酬に含まれていないのが一般的です。

追加サービス 追加費用の目安
土地の評価(1筆あたり) 5〜10万円
非上場株式の評価 10〜20万円
相続人の加算(基本報酬に対する割合) 10〜20%/人
申告期限3ヶ月以内の割増 20〜50%
税務調査の立会い(1日あたり) 5〜10万円

見積もり時は、これらの追加費用がどこまで含まれているかを必ず確認してください。「基本報酬30万円」と「すべて込みで50万円」なら、後者の方が最終的に安くなることもあります。

相続税申告を税理士に依頼すべき理由は「土地の評価」と「特例の適用」

相続税の申告は、法律上は自分で行うことも可能です。しかし、編集部の見解として、相続税申告は税理士に依頼すべきケースがほとんどです。その最大の理由は、土地の評価と各種特例の適用判断にあります。

土地の評価は専門家でも判断が分かれる

相続財産に土地が含まれている場合、その評価額は計算方法や補正の適用次第で大きく変わります。同じ土地でも、税理士によって数百万円の評価差が出ることは珍しくありません。路線価の読み取り、地形補正、奥行補正、間口狭小補正など、複数の補正率を正しく適用する必要があり、不動産の専門知識がない限り自力で行うのは現実的ではありません。評価額が下がれば、それだけ相続税が減るため、税理士費用を払っても結果的に得をするケースが大半です。

小規模宅地等の特例を使えば最大80%の評価減が可能

相続税には、税額を大幅に軽減できる特例がいくつかあります。中でも「小規模宅地等の特例」は、自宅の敷地を最大80%減額できる強力な制度です。

例えば、評価額5,000万円の自宅敷地にこの特例が適用できれば、評価額は1,000万円まで下がります。ただし適用要件が細かく、要件を満たしていない状態で申告すると否認されるリスクがあります。特例の適用可否を正しく判断してもらうだけでも税理士に依頼する価値があります。

相続税の税率は最大55%で申告の正確さが税額を大きく左右する

相続税の税率は10%から最大55%の8段階に分かれています(出典 国税庁 相続税の税率)。例えば、法定相続分に応ずる取得金額が5,000万円超〜1億円以下なら税率30%、1億円超〜2億円以下なら40%です。これだけの税率がかかる以上、適正な財産評価と特例の適用が数百万円単位で税額に影響します。所得税の確定申告とは次元の違う慎重さが求められます。

相続税申告の税理士費用を抑える3つの方法

税理士費用は決して安くありませんが、工夫次第で費用を抑えることは可能です。ただし、申告の精度を犠牲にしては本末転倒です。

早めに依頼すれば割増料金を避けられる

申告期限が迫ってからの依頼は割増料金の対象になります。四十九日の法要が終わった時点で税理士を探し始めれば、申告期限まで8ヶ月以上の余裕があり、割増は発生しません。

必要書類を事前に整理しておくと費用が下がる

税理士に依頼する前に、相続財産に関する書類を整理しておくだけで、税理士の作業時間が短縮され、その分費用が下がる可能性があります。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで)
  • 相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書
  • 不動産の登記簿謄本と固定資産税評価証明書
  • 金融機関の残高証明書(死亡日時点のもの)
  • 生命保険の支払通知書
  • 過去3年分の贈与の記録
  • 葬儀費用の領収書

これらの書類は最終的に必要になるものです。自分で取得できるものは先に用意しておくと、打ち合わせもスムーズに進みます。(戸籍の収集だけで1〜2ヶ月かかることもあるので、早めに動いてください)

複数の税理士から見積もりを取って比較する

相続税申告の報酬は事務所によって大きな差があります。同じ遺産内容でもA事務所では40万円、B事務所では70万円ということが普通にあるため、最低でも2〜3社から見積もりを取ってください。

自分で複数の税理士に連絡を取るのが難しい場合は、税理士紹介サービスを利用すると、相続税に強い税理士を無料で紹介してもらえます。遺産の概要を伝えるだけで、条件に合った税理士を複数紹介してもらえるため、見積もり比較の手間が大幅に省けます。

相続税に強い税理士の選び方は「実績の件数」で判断する

相続税申告は、所得税や法人税の申告とは必要な知識がまったく異なります。税理士なら誰でも同じように対応できるわけではないため、相続税に詳しい税理士を選ぶことが重要です。

相続税申告の年間件数が10件以上あるかを確認する

相続税に強い税理士かどうかを見極める最も確実な指標は、年間の相続税申告件数です。相続税は日常的に扱う税目ではないため、所得税や法人税を中心に扱っている税理士事務所では、年間1〜2件程度しか対応しないところも多いです。

年間10件以上の相続税申告を扱っている事務所であれば、土地の評価や特例の適用に関する判断力が高いと期待できます。相談時に「年間の相続税申告件数はどのくらいですか」と直接聞くのが最も確実です。(聞きにくいと感じるかもしれませんが、実績を隠す税理士はまずいません)

書面添付制度に対応しているかも確認する

「書面添付制度」とは、税理士が申告書の内容について詳細な説明書を添付する制度です。書面添付がある申告書は、税務調査の前に税理士に対する意見聴取の機会が設けられるため、結果として税務調査に発展しにくくなります。追加費用がかかる場合もありますが、税務調査が入った場合の立会い費用や精神的な負担を考えると、書面添付に対応している税理士を選ぶメリットは大きいです。

相続税申告でよくある失敗パターンと対策

相続税申告は人生で何度も経験するものではないため、失敗しやすいポイントがあります。事前に知っておくだけで無駄な出費を防げます。

「費用が安い」だけで選んで申告漏れが発覚した

費用の安さだけを基準に税理士を選んだ結果、申告後の税務調査で財産の漏れが指摘され、追徴課税と加算税を支払うことになるケースがあります。費用が安いこと自体は問題ではありません。重要なのは、その費用でどこまでの作業を行ってくれるかです。見積もりの段階で「財産の洗い出しはどこまで行うか」「過去の贈与の確認はするか」など、具体的な作業範囲を確認してください。

遺産分割協議が長引いて申告期限に間に合わなかった

遺産分割協議がまとまらないまま申告期限(死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内)を過ぎると、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例が使えなくなります。分割協議が難航しそうな場合は、法定相続分で申告し、分割確定後に更正の請求を行う方法もあります。この判断は早い段階で税理士に相談することが重要です。

名義預金や生前贈与の申告漏れを指摘された

税務調査で最も指摘されやすいのが「名義預金」(被相続人のお金で作られた家族名義の預金口座)です。名義に関わらず被相続人の財産として申告する必要があります。また、被相続人が亡くなる前3年以内(令和6年1月1日以降の贈与は段階的に7年以内に延長)の贈与は、相続財産に加算して申告しなければなりません。これらの判断は、相続税の実務経験がある税理士でなければ正確に行うのが難しい項目です。

相続税申告を自分で行うなら「預貯金のみ」のケースに限る

相続税の申告は自分で行うことも法律上は可能です。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算され(出典 国税庁 相続税の計算)、基礎控除を超える財産がある場合に申告が必要です。相続財産が預貯金と少額の生命保険だけで、土地や非上場株式が含まれないケースであれば、国税庁ホームページの記載例を参考に自分で作成することも不可能ではありません。

ただし、相続財産に土地が1筆でも含まれている場合は、自力での申告はおすすめしません。土地の評価を誤ると税額が大きく変わるためです。また、自分で申告した場合に税務調査が入ると、調査官への対応も自力で行う必要があります。税理士に依頼していれば、調査の立会いから交渉まで任せられるため、精神的な負担も金銭的なリスクも大幅に軽減されます。

生前からの相続税対策について詳しくは相続税対策を税理士に依頼すべき理由もあわせてご覧ください。

最後に

相続税申告の税理士費用は、遺産総額の0.5〜1.0%が相場です。遺産総額5,000万円で20〜40万円、1億円で50〜100万円が目安になります。費用は決して安くはありませんが、土地の適正な評価や各種特例の適用によって、税理士費用以上の税額軽減が見込めるケースがほとんどです。

複数の税理士から見積もりを取り、費用だけでなく実績や対応範囲を比較した上で依頼先を決めてください。

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執筆者
松下早紀
松下 早紀

税理士事務所・法律事務所で長年勤務した経験を生かし、税理士の選び方や税理士報酬の仕組みなどを解説しています。税理士は一度契約すると、なかなか変更しづらいものの、探す手段も限られています。後悔しない税理士探しをするために税理士ドットコムで最適な税理士選びをオススメします。