税理士紹介サービスを使おうとして「紹介料を取るのは税理士法に触れないのか」と気になった方に向けて、条文ベースで整理しました。結論として、税理士法には税理士業務の紹介に対する対価の授受を禁じる条文がありません。紹介サービスが手数料を受け取ること自体は違法になりません。
ただし、紹介会社が踏み越えると違法になる線ははっきり存在します。この記事では、根拠になる条文、弁護士の場合との違い、利用者が確認すべきポイントまでまとめました。
この記事の目次
税理士法には紹介料の授受を禁じる条文がない
第52条が禁じているのは税理士でない者が税理士業務を行うこと
この論点の中心になるのは税理士法第52条です。条文はこうなっています。
「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない」(出典 e-Gov法令検索 税理士法 第52条)
禁止されているのは税理士業務そのものを無資格で行うことであって、税理士を紹介することでも、その対価を受け取ることでもありません。ここでいう税理士業務が何を指すかは、次の章で条文どおりに整理します。
弁護士法には周旋の禁止があるが、税理士法にはない
「士業の紹介で金銭を受け取るのは違法」というイメージは、弁護士の世界のルールが混ざって広まっているものです。弁護士法第72条は次のように定めています。
「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で(中略)法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない」(出典 e-Gov法令検索 弁護士法 第72条)
弁護士法には「周旋(=仲介・紹介)を業とすること」を明示的に禁じる文言があります。一方の税理士法第52条にはこの一文がありません。この差が、税理士紹介サービスが成立している法的な根拠です。(同じ士業だから同じルールだろう、という思い込みが誤解のもとになっています)
違反すると2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金
第52条に違反した場合の罰則は軽くありません。税理士法第59条は、第52条違反と第37条の2違反について「二年以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する」と定めています(出典 e-Gov法令検索 税理士法 第59条)。
紹介会社が線を越えれば刑事罰の対象になるということです。だからこそ、まともに運営されている紹介サービスほど、税務の中身には一切踏み込まない設計になっています。
税理士業務にあたるのは税務代理・税務書類の作成・税務相談の3つ
どこからが「税理士業務」なのかは、税理士法第2条第1項が定義しています。この3つのいずれかに該当する行為を無資格で行えば第52条違反、該当しなければ違反にならないという線引きです。
| 区分 | 条文上の内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 税務代理 | 税務官公署に対する申告・申請・請求・不服申立てにつき、または税務調査や処分に関して税務官公署に対してする主張・陳述につき、代理し、または代行すること | 税務調査への立会い、申告の代理 |
| 税務書類の作成 | 税務官公署に提出する申告書・申請書・請求書などを作成すること | 確定申告書、法人税申告書の作成 |
| 税務相談 | 申告等または申告書等の作成に関し、租税の課税標準等の計算に関する事項について相談に応ずること | 「この支出は経費になるか」への回答 |
注目すべきは3つ目の税務相談です。無償かどうかを問わず、税額の計算にかかわる具体的な相談に答えた時点で税理士業務にあたります。紹介会社が「無料相談だから問題ない」と考えて回答するのは通用しません。
逆に、税理士の得意分野や料金体系を伝えること、面談を設定すること、契約後のフォローをすることは、いずれも3つのどれにも当たりません。紹介サービスの業務範囲がこの外側に設計されているのは、この定義があるからです。
紹介サービスが適法に成立しているのは業務に踏み込まないから
紹介会社の役割は面談の設定までで終わる
税理士紹介サービスの標準的な流れは、ヒアリング、条件に合う税理士の選定、面談の日程調整、面談後のフォローまでです。契約するかどうかは利用者と税理士が直接決め、契約の当事者に紹介会社は入りません。
この範囲であれば、行っているのは税理士業務ではなくマッチングなので、第52条の適用対象にはなりません。
具体的な税務の回答をした時点で第52条に触れる
危ないのは、紹介会社の担当者が「その経費は落とせますよ」「その規模なら消費税の申告は不要です」といった具体的な回答をしてしまうケースです。これは税務相談にあたるため、税理士資格のない担当者が行えば第52条違反になります。
編集部の見解としては、ヒアリングの段階で税務の中身に踏み込んだ回答をしてくる紹介会社は、それだけで信頼度を下げて考えたほうがいいです。(親切に見えますが、法令を理解していないか、理解した上で越えているかのどちらかです)
税理士が名義を貸せば第37条の2の違反になる
税理士側にも制約があります。税理士法第37条の2は「税理士は、第五十二条又は第五十三条第一項から第三項までの規定に違反する者に自己の名義を利用させてはならない」と定めています(出典 e-Gov法令検索 税理士法 第37条の2)。
無資格の業者が実質的に申告書を作り、税理士が名前だけ貸すという形は、業者側が第52条違反、税理士側が第37条の2違反になります。どちらも第59条の罰則の対象です。
税理士側には税理士会の綱紀規則という別のルールがある
法律とは別に、税理士は所属する税理士会の会則と綱紀規則に従う義務があります。日本税理士会連合会が示している綱紀規則の準則には、紹介にかかわる規定がいくつかあります。
委嘱は依頼者から直接受けなければならない
綱紀規則(準則)第10条第2項は「会員は、委嘱者から直接業務委嘱を受けなければならない」と定めています(出典 日本税理士会連合会 ○○税理士会綱紀規則(準則))。
紹介会社が契約の当事者になったり、いったん業務を受けて税理士に流したりする形は、この規定に反します。紹介サービスが「契約は税理士と直接結んでください」という案内をしているのは、この規定があるためです。
非税理士とのあっ旋・紹介の禁止は無資格営業者が対象
同じ準則の第24条には「非税理士との関連排除」という規定があり、会員は法第52条などに違反する者またはその疑いのある者と「業務上のあっ旋を受け、又は紹介すること」の関係を結んではならないとされています。
ここを根拠に「紹介サービスとの提携は禁止されている」と説明されることがありますが、条文が対象にしているのはあくまで第52条に違反している者、つまり無資格で税理士業務を行っている業者です。税理士業務を行わずマッチングだけをしている紹介会社は、この条文の対象になりません。
報酬は合理的な算定根拠によって設定する
準則第27条は、税理士業務報酬を請求するときは合理的な算定根拠によらなければならないと定めています。紹介手数料の分をそのまま顧問料に上乗せするような設定は、この規定との整合が問われます。
利用者の立場では、紹介経由だから割高になっていないかを見積もり段階で確認するのが実務的な対応になります。同じ事務所に直接問い合わせた場合の料金を聞いてみるのが手っ取り早い方法です。
紹介料を払うのは税理士側で、利用者の負担はない
成功報酬型で初年度の報酬から支払われる
主要な税理士紹介サービスは、利用者からは料金を取らず、成約したときに税理士側から手数料を受け取る成功報酬型で運営されています。金額は初年度の報酬総額に対する一定割合とするサービスが多く、各社の具体的な仕組みは税理士紹介サイトおすすめ6社を比較で整理しています。
利用者が無料で使えるのは税理士が営業費用を負担しているから
紹介サービスは、税理士から見れば集客の外注です。自分で広告を出したり営業したりする代わりに、成約したときだけ費用を払う仕組みなので、税理士側にとっても合理的な選択になります。
利用者にとっては、複数の候補を無料で比較できる点が実利です。まだ相場感がつかめていない段階であれば、無料の税理士紹介サービスで2〜3人の見積もりを取ってから判断すると、費用の目線が定まります。
紹介サービスを使わずに探す方法もある
日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで直接探せる
手数料の仕組みそのものが気になるなら、紹介サービスを介さずに探す方法もあります。日本税理士会連合会は、登録されているすべての税理士と税理士法人を検索できるサイトを公開しており、国税庁のページからも案内されています(出典 国税庁 税理士をお探しの方へ)。
地域や取扱業務で絞り込めるため、候補を自分で集めたい場合はここが出発点になります(税理士情報検索サイト)。
ただし、掲載されているのは登録情報であって、料金や対応の速さまではわかりません。結局は自分で数件に問い合わせて比較する手間が発生します。(そこを代行してもらうことに価値を感じるかどうかが、紹介サービスを使うかどうかの分かれ目です)
税理士会の無料相談会は依頼前の確認に使える
各地の税理士会は、納税者向けの無料相談を実施しています。日本税理士会連合会のサイトから、地域ごとの相談会の情報を確認できます(出典 日本税理士会連合会 税理士会の相談会に行ってみる)。
相談会は担当税理士を選べるわけではないため顧問先探しには向きませんが、そもそも税理士に頼むべき状況なのかを確かめる場としては有効です。
紹介料をめぐるよくある疑問
知人に税理士を紹介して謝礼を受け取るのは問題にならない
個人が知り合いに税理士を紹介し、税理士から謝礼を受け取ったとしても、税理士法上の禁止規定はありません。税務相談に応じたわけではないため第52条にも触れません。
ただし継続的に紹介を行って対価を得る場合は、事業所得または雑所得として自分の確定申告に含める必要があります。
紹介サービス経由でも税理士の質が変わるわけではない
紹介サービスに登録している税理士は、集客の一部を外注しているだけで、資格も業務内容も直接依頼した場合と同じです。登録の有無で税理士の力量は判断できません。
見るべきなのは、自分の業種や事業規模の顧問実績があるか、連絡がつきやすいかといった実務的な条件です。判断軸は失敗しない税理士の選び方と契約前に確認すべき5つの条件にまとめています。
税理士から紹介料を請求されることはない
利用者が紹介サービスに手数料を払う仕組みにはなっていません。もし利用者側に紹介料を請求してくる業者があれば、契約内容と運営会社を確認したうえで、いったん立ち止まったほうがいいです。
違法かどうかより、確認すべきなのは契約の相手
契約書の相手が税理士本人か税理士法人かを見る
契約書の当事者欄が紹介会社になっている場合は、綱紀規則第10条第2項に反する形です。署名する前に、契約の相手が税理士または税理士法人になっているかを必ず確認してください。
税務の質問に紹介会社が答えてきたら距離を置く
前述のとおり、紹介会社の担当者が税務の具体的な回答をするのは第52条違反です。「この経費は認められます」といった断定的な回答が返ってきたら、その会社の運営体制を疑ったほうがいいです。
紹介手数料が顧問料に上乗せされていないかを確かめる
紹介経由と直接依頼で料金が変わるかどうかは、事務所によります。気になる場合は、紹介を受けた事務所の公式サイトに掲載されている料金表と、提示された見積もりを見比べてください。差がある場合はその理由を聞けば済む話です。
税理士そのものの選び方については失敗しない税理士の選び方と契約前に確認すべき5つの条件、紹介サービスの比較は税理士紹介サービスおすすめ比較もあわせて参考にしてください。
最後に
税理士法第52条が禁じているのは、税理士でない者が税理士業務を行うことです。弁護士法第72条のような周旋の禁止規定は税理士法にないため、税理士を紹介して対価を受け取る行為自体は違法になりません。
気にすべきなのは違法性そのものではなく、紹介会社が税務の中身に踏み込んでいないか、契約の相手が税理士本人になっているか、紹介手数料が顧問料に転嫁されていないかという3点です。ここさえ押さえておけば、紹介サービスは候補を効率よく集めるための手段として問題なく使えます。
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