税務署から税務調査の連絡が入っても、顧問税理士がいない、あるいは顧問税理士が調査対応に慣れていないというケースは珍しくありません。税務調査の立会いは、顧問契約とは別にスポットで依頼できます。この記事では、税務調査対応を専門的に扱う税理士事務所5社の料金と体制を比較し、依頼のタイミングと費用の目安を整理します。
この記事の目次
税務調査の立会いは顧問税理士以外にも依頼できる
税務調査の立会いは、顧問契約を結んでいない税理士にもスポットで依頼できます。現在の顧問税理士を変更する必要もありません。
調査の連絡が来てからでも依頼は間に合う
税務調査は、原則として事前に税務署から連絡が入ります。連絡から調査当日までは2〜3週間程度の期間があるのが通常で、この間に立会いを依頼する税理士を決めれば間に合います。
国税庁が公表した令和5事務年度の法人税等の調査事績によると、法人税・消費税の実地調査は約5万9,000件、追徴税額は3,197億円にのぼります(出典 国税庁 令和5事務年度の法人税等の調査事績について)。調査件数はコロナ禍前の水準に戻りつつあり、追徴税額は高い水準が続いています。
顧問税理士がいてもセカンドオピニオンとして頼める
顧問税理士はいるものの、調査対応の経験が少なくて不安という場合、税務調査対応だけを別の税理士に依頼する形も取れます。顧問税理士に伝えづらい場合もありますが、調査は結果が金額に直結するため、実務では珍しい依頼ではありません。
税理士であれば誰でも税務調査に立ち会えますが、調査官との交渉経験の差はそのまま追徴税額の差になります。(何を主張でき、どこは争っても通らないかを判断できるかどうかが分かれ目です)
税務調査に強い税理士5選
税務調査の立会いを専門的に扱い、料金や体制を公開している税理士事務所を5社紹介します。国税OBの在籍状況、料金体系、対応エリアを比較してください。
保田会計事務所

参照元 https://yg-tax.net/tax-accountant
- 代表は元国税調査官かつ公認会計士・税理士
- 税務調査の立会い実績1,000件超
- スポット依頼・セカンドオピニオンに対応、土日祝も相談可
保田会計事務所は、東京都江東区に拠点を置く会計事務所です。代表は東京国税局および税務署で約10年間、主に法人税の税務調査を担当した元国税調査官で、その後は監査法人での上場会社監査やIPO支援、大手税理士法人での相続・事業承継業務を経験しています。
税務調査の立会い実績は1,000件を超えると公表しており、着手金型と成果報酬型のプランを選べる点が特徴です。営業時間は9時から20時、定休日なしで、即日・土日祝の相談にも対応しています。(調査の連絡を受けてから慌てて探す状況でも動きやすい体制です)
料金体系
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| 基本料金(着手金) | 個人20万円〜/法人30万円〜(顧問契約時は無料) |
| 交渉報酬 | 個人15万円×調査年数/法人20万円×調査年数 |
| 申告書作成報酬 | 5万〜10万円×調査年数 |
| プラン | 成果報酬型も選択可 |
調査対象となる年数によって費用が変わる体系です。3年分の調査であれば交渉報酬もその年数分が必要になります。
佐川洋一税務調査専門税理士事務所

参照元 https://www.zeimutyousa.jp/
- 財務省・国税庁・国税局・税務署に20年以上勤務した国税OB
- 税務調査対応に完全特化、所長税理士が直接担当
- 国税局資料調査課による調査にも対応
佐川洋一税務調査専門税理士事務所は、税務調査対応だけに特化した税理士事務所です。代表は財務省主税局、国税庁主任税務分析専門官、国税局・税務署の統括国税調査官を歴任し、20年以上にわたって税務当局に勤務した経歴を持ちます。
法人税・所得税・相続税・消費税の税務調査に対応し、案件は所長税理士が直接担当します。外注や担当者任せにしない体制で、通常の税務署調査だけでなく、国税局資料調査課が行う規模の大きい調査にも対応しています。
料金体系
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 個人事業主の総費用平均 | 約49万円(修正申告を含む) |
| 詳細 | 案件内容に応じて見積もり |
公式サイトでは、個人事業主の修正申告を含む総費用の平均額を約49万円と公表しています。事案の内容によって変動するため、個別の見積もりが必要です。
F&Mパートナーズ税理士法人

参照元 https://fmp-tax.jp/price/tax-investigation/
- 税務調査立会いの料金を税目別に公開
- 無申告状態からの調査にも対応
- 大阪・江坂駅から徒歩5分
F&Mパートナーズ税理士法人は、大阪府吹田市に拠点を置く税理士法人です。税務調査の立会い料金を税目別に公開しており、依頼前に費用の見当をつけやすい点が特徴です。
基本料金には事前準備、調査当日の立会い、税務当局との交渉・反論までが含まれます。申告をしていない状態で調査の連絡が来た場合の料金も明示されており、無申告のまま放置していたケースでも相談できます。(追徴税額の最小化と早期終結のバランスを重視する方針を掲げています)
料金体系
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| 法人税調査 | 33万円〜(無申告の場合66万円〜) |
| 所得税調査 | 22万円〜(無申告の場合44万円〜) |
| 相続税調査 | 33万円〜(見積もり) |
| 修正申告書作成 | 法人税11万円/所得税7.7万円/消費税5.5万円(各1通) |
顧問契約がない場合の料金です。交通費・宿泊費は別途実費となります。
税務調査の立会い専門 国税OB税理士チーム

参照元 https://www.tax-support.xyz/price-list.php
- 基本料金0円、日当と修正申告書作成料のみの明朗会計
- 神戸・大阪・東京・名古屋に国税OB税理士を配置
- 年中無休・土日祝対応、顧問税理士の変更は不要
税務調査の立会いに特化した国税OB税理士のチームです。神戸を中心に大阪・東京・名古屋に国税OB税理士を配置し、全国の税務調査に対応する体制をとっています。
基本料金を0円とし、実際に動いた日数分の日当と修正申告書の作成報酬だけを請求する料金体系です。事前打合せ、調査立会い、税務当局との交渉、調査の終結までを一連で対応します。現在の顧問税理士はそのままで、セカンドオピニオンとして利用できる形をとっています。
料金体系
| 項目 | 料金 |
|---|---|
| 基本料金 | 0円 |
| 日当(1人) | 7万円 |
| 修正申告書作成(法人税・所得税1年分) | 10万円(国税局・調査部所轄は20万円) |
| 修正申告書作成(消費税1年分) | 5万円(国税局・調査部所轄は10万円) |
調査が1日で終われば費用を抑えやすい一方、日数が延びるほど日当が積み上がる仕組みです。
ジー・エフ税理士法人

- 複数名の国税OB税理士がチームで対応
- 個人・法人の双方に対応、全国対応可能
- 公認会計士・社労士・司法書士と連携したワンストップ体制
ジー・エフ税理士法人は、東京都千代田区平河町に拠点を置く税理士法人です。複数名の国税OB税理士が在籍し、元調査官の視点からチームで戦略的に調査対応を行う体制を掲げています。
担当者1人で抱え込まず複数体制で対応するため、調査の連絡から当日までの準備をスピーディーに進めやすい点が特徴です。公認会計士、社会保険労務士、司法書士など他士業とも連携しており、調査をきっかけに労務や登記の問題が出てきた場合も相談できます。2026年7月に経営革新等支援機関の認定を受けています。
料金体系
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 税務調査対応 | 公式サイトに料金の記載なし(個別見積もり) |
| 対応範囲 | 個人・法人の税務調査、税務顧問 |
料金は公開されていないため、相談時に見積もりを確認してください。
立会い費用は日当3万〜8万円が相場
税務調査の立会い費用は、1日あたり3万〜8万円が相場です。ただし、事務所によって料金の組み立て方が異なるため、日当だけを見ても総額はわかりません。
料金体系は日当型・パック型・成果報酬型の3種類
| 料金体系 | 特徴 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 日当型 | 立会い1日あたりで課金。基本料金は無料または低額 | 1〜2日で終わりそうな調査 |
| パック型 | 事前準備から終結までを一括の料金で設定 | 争点が多く日数が読めない調査 |
| 成果報酬型 | 減額できた追徴税額に応じて報酬が決まる | 多額の追徴が見込まれる調査 |
見積もりを取るときは、立会いの日当だけでなく、修正申告書の作成報酬まで含めた総額を確認してください。調査は1日で終わるとは限らず、修正申告が必要になれば税目ごと・年分ごとに作成報酬が発生します。(日当5万円と聞いていたのに、終わってみたら総額が3倍になっていたという行き違いはここで起きます)
修正申告書の作成報酬は年数分かかる
税務調査は通常3年分をさかのぼって行われ、問題が見つかれば5年分、悪質と判断されれば7年分に及びます。修正申告書の作成報酬は1年分・1税目あたりで設定されていることが多く、対象年数が増えるほど費用は積み上がります。
立会い費用の相場については税務調査に税理士の立会いは必要?費用相場と依頼するメリットでも詳しく解説しています。急ぎで依頼先を探している場合は、税理士紹介サービスを使えば、調査対応の実績がある税理士を無料で紹介してもらえます。
税務調査に強い税理士を見極める3つの視点
調査対応の実力は、面談時の質問で判断できます。
国税OBが在籍しているかを確認する
元国税調査官の税理士は、調査官が何を根拠にどこまで踏み込んでくるかを内側から知っています。どこは争点になり得て、どこは主張しても通らないかの線引きが早い点が実務上の強みです。ただし、国税OBであれば必ず有利になるわけではなく、出身部署と自社の税目が合っているかも確認すべきです。
年間の立会い件数を聞く
調査対応の経験値は件数に表れます。事務所全体ではなく、実際に立ち会う税理士個人の経験件数を確認してください。年に数件しか経験のない税理士と、年間数十件を扱う税理士では、交渉の引き出しの数が違います。
調査後の見通しを最初に説明できるか確認する
相談の段階で「今回の争点はここになる可能性が高い」「追徴はこの範囲に収まる見込み」と見通しを示せる税理士は、経験が蓄積されています。逆に、当日にならないとわからないという説明に終始する場合は、経験が浅い可能性があります。
調査の連絡から当日までの2〜3週間で準備を終える
税務調査の成否は、当日の受け答えより事前準備で決まります。
帳簿と証憑の整理を先に済ませる
調査官が最初に確認するのは、帳簿と請求書・領収書などの証憑が揃っているかです。書類が見つからない状態で調査に入られると、それだけで印象が悪くなり、確認の範囲が広がります。依頼した税理士と一緒に、事前に指摘されそうな箇所を洗い出しておくのが基本です。
日程は変更を申し出ることもできる
税務署から提示された調査日程は、正当な理由があれば変更を相談できます。税理士を探す時間が必要な場合や、繁忙期と重なっている場合は、日程調整を申し出ることも選択肢です。
税務調査で指摘されやすいのは売上の計上時期と経費の線引き
調査官が重点的に見る項目はある程度決まっています。事前に自社の状況を確認しておけば、当日の受け答えに困りません。
売上の計上時期がずれていないか
最も指摘が多いのが、決算期をまたぐ売上の計上時期です。3月決算の会社が3月に納品した売上を、入金があった4月に計上していると「期ズレ」として否認されます。売上は入金日ではなく、商品の引渡しや役務提供が完了した日で計上するのが原則です。
期ズレは意図的な所得隠しではないため重加算税の対象にはなりにくいものの、修正申告と追徴は避けられません。決算月の前後1か月の請求書は、調査で必ず確認されると考えておくべきです。
私的な支出が経費に混ざっていないか
交際費、旅費交通費、車両費は、業務との関連性を問われやすい科目です。家族での食事、私的な旅行、休日の車の使用が経費に入っていないかを確認されます。領収書があっても、誰とどんな目的で使ったかを説明できなければ否認されることがあります。
交際費については、日付・相手先・人数・目的を領収書の裏やメモに残しておくと説明が通りやすくなります。(何を経費として認めてもらえるかは事業内容によって変わるため、判断に迷うものは税理士に確認しておくべきです)
外注費が給与と判断されないか
個人に業務を委託して外注費として処理している場合、その実態が雇用に近いと「給与」と判断されることがあります。給与と認定されると、消費税の仕入税額控除が受けられなくなるうえ、源泉徴収漏れも指摘されます。
指揮監督を受けているか、時間的な拘束があるか、道具や材料を誰が負担しているかといった実態で判断されます。建設業やIT業など、個人事業主への外注が多い業種では特に注意が必要な論点です。
在庫の計上漏れがないか
期末在庫を少なく計上すると利益が圧縮されるため、棚卸表は必ず確認されます。倉庫にある商品だけでなく、仕入れて未使用の材料、預けている商品まで含まれているかが見られます。
現金商売は特に細かく確認される
飲食店や小売業など現金取引の多い業種は、レジのデータと帳簿の照合が行われます。予約台帳、シフト表、仕入れの数量から売上を推計されることもあります。
調査当日は1〜2日、その後の交渉に1〜2か月かかる
税務調査は当日で終わりではありません。全体の流れを把握しておくと、必要な期間の見当がつきます。
1日目の午前は事業概況の聞き取りから始まる
調査官はいきなり帳簿を見るわけではなく、まず経営者から事業の概要を聞き取ります。創業の経緯、取引先の構成、従業員数、業務の流れといった内容です。ここでの説明と帳簿の内容に食い違いがあると、確認の範囲が広がります。
午後から帳簿と証憑の確認に入り、2日目に個別の疑問点を詰めるのが一般的な流れです。小規模な事業者なら1日で終わることもあります。
当日答えられない質問は持ち帰ってよい
その場で思い出せない取引について、推測で答えるのは避けるべきです。曖昧な回答が後で事実と異なると判明すると、印象が悪くなります。確認して後日回答すると伝えれば問題ありません。立会いの税理士がいれば、この判断を代わりに行ってくれます。
調査後の交渉で着地点が決まる
調査当日以降、指摘事項について税務署と税理士の間でやり取りが続きます。ここで争点を絞り、どこを修正申告に含めるかの交渉が行われます。この期間が1〜2か月続くことも珍しくなく、実際の追徴税額はこの交渉で決まります。調査対応の経験値が最も表れるのがこの局面です。
本記事に掲載した各事務所の料金・体制は、2026年8月時点で各社の公式サイトに掲載されている情報にもとづいています。実際の費用は調査の内容や対象年数によって変わるため、依頼前に必ず見積もりを確認してください。
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最後に
税務調査の立会いは、顧問契約とは切り離してスポットで依頼できます。費用の相場は日当3万〜8万円ですが、修正申告書の作成報酬まで含めた総額で比較しないと実際の負担はわかりません。国税OBの在籍状況、担当税理士個人の立会い件数、見通しを説明できるかどうかが、依頼先を選ぶときの判断材料になります。
調査の連絡から当日までは2〜3週間しかありません。連絡が来た時点で動き出すのが最善です。依頼先に心当たりがない場合は、税理士ドットコムの無料紹介サービスで、税務調査の対応実績がある税理士を紹介してもらう方法があります。











